中世の見直し
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ゴシック時代を賛歌するラスキンの『ベニスの石』という本を思い出しながら、中世を見直しました。神に帰依した人々が、安らかな死後を信じる心で結ばれあい、肩を寄せ合いながら生きていた時代です。中世の街々は、その穏やかの心でむすばれた職人が、心を1つにして生み出したトータルデザインと見てよいのではないでしょうか。 その心が、古代文明が荒廃させた自然まで復活させ、やがてはルネサンスに結びつけ、レオナルドダビンチやミケランジェロまで排出したのではないか。だから、ヨーロッパ人は第二次大戦で木っ端微塵にしたりされたりした街まで復元し、讃歌し合い、生きようとしているのではないでしょうか。 ピエンツァはヨーロッパでは最初に設計図に基づいて造られた街と聴きましたが、かつてここを支配したナチスドイツ軍の司令官は、撤退するときに、ヒトラーから破壊命令を受けていながら、それに背く命令書を残していたと聞かされました。その昔、パリでも同様のことが生じていたと聴いたことがあります。 サンジミニアの塔では、ドイツ軍が破壊しようとしたときに、街の女性が手をつないで人の環を作り、守ったようです。このたびもピサの斜塔を訪ねられませんでしたが、そこでは爆破するスイッチを、押すべきドイツ兵が恐れを感じて押せなかったようです。 きっとこうした心意気がEUを生み出したに違いない、と私は勝手に解釈しながら街々をめぐりました。 |
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