本気で
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イノシシも、きっと命がけで侵入しているのでしょう。用心深く襲っています。例えばこのたびは、レースのカーテン地でミブナの苗をトンネル栽培していますが、その畝には手を出していません。そこに罠を感じたのではないでしょうか。 一番ひどい被害を受けたところは、除草していなかったところに生えたオニユリとジネンジョ(自然薯)でした。ゴボッと穴をあけられていました。ついで、ミミズがいそうなところで、しかもネギやニンニクなど嫌いな匂いがしないところが荒らされていました。まるで小型のブルトーザーが走ったように、長さ1mないしは3mほどにわたって土がめくられています。 このたびはまだ、檜林や喫茶店の前庭の苔がめくられていないのが幸いでした。ミミズがもっと多くいそうで、やわらかい土のところがあったからでしょう。その時点で妻の展示会が終わり、私が帰国したのが幸いでした。苔までめくられずに済んだからです。 その代わりに、寝室の縁先から1mあまりのところにあったオニユリや自然薯まで掘り返されており、妻はすっかり寝込んでいたことをくやんでいました。 さらに私も、帰国したあとで裏庭のジンジャーやコゴミの生えているところにとどまらず、ハッピーの小屋の目と鼻の先、居間の縁先から3m足らずのところに生えているスモモの周りまで、太いクリスマスローズの株があるところは避けて、すっかりめくられてしまった.のです。「ナメるんじゃないぞ」と腹が立ちました。 野生動物はとても鋭い勘の持ち主です。たとえばサルで言えば、私がいるときは遠慮します。私と目が合えばそそくさと逃げます。しかし、妻ひとりの時で、妻が石を投げようとすると、受ける手振りをされてしまい、投げずじまいになったと言います。 このたびはイノシシに完全にナメられてしまったのです。私が留守で妻ひとりでした。しかも、妻も展示会中で、被害の確認が遅れたはずです。被害に気がついても、対策が遅れたことでしょう。人間が相手と違って、こうなれば力ずくの対策が必要になるのです。交番に知らせても有効な手を打ってもらえないでしょう。もちろん,余り高度な仕掛けでは,イノシシには通用しません。イノシシに直接「殺されるかもしれない」との恐怖感を与えないと止まらないのです。しかも、妻には弱みがありました。「あの子かもしれない」と考えていたことです。 大型のイノシシの仕業ではありませんでした。跳ね飛ばした石は、せいぜいが人間の頭の4つ分程度でしたし、掘った穴も30cmどまりでした。妻が「あの子かも」と考えたのも無理はありません。大型のイノシシにかかれば、小型のブルドーザーが暴れたかのように地形まで替えられます。自然薯が1mに達しておれば、1m掘ってしまいます。 「あの子」とは、わが家の庭で捕まえたウリボウの1匹です。牛乳を飲めなかった方は死体で発見しましたが、元気な方は山に帰ったことでしょう。 また妻は、「あの子」と考えかねない体験を持っています。1999年のカラス事件です。私が少し長期の海外出張から帰ってみると、クヌギの木の上にカラスが作った巣があり、子育てをしていました。それに気づきながら、妻は追い払っていなかったのです。 その後、恐れていたことが生じました。その子はわが家の畑を「ナワバリ」とでも思ったようで、トマトやキュウリを傍若無人に襲い始めたのです。その時点になって妻はあわて、小石を片手に庭をうろつくようになりましたが、らちがあかないに決まっています。結局、私が怖い思いをさせて遠慮させるようにしました。 妻は「あの子」が飢えているのなら可哀想とおもったり、これ以上好き勝ってさせていたら大変なことになりそうと不安になったりしながら、ズルズルと日を過ごしていたようです。この曖昧な心情では、イノシシに見透かされ、ナメられて当然です。 もちろん妻は何も手を打たなかったわけではありません。1日だけ少し早めに展示会場をぬけだし、四方竹のタケノコを掘りとっています。それが今年最後の収穫になり、佃煮に出来たと喜んでいました。 |
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モロヘイヤとオクラの跡は、混合レタスとチマサンチェの畝になりました。その左隣の畝はまだ荒らされたままになっています。畑では、青菜の畝が一番ひどいイノシシの被害を受け、半分以上が台なしにされました。そのかわりにというわけではありませんが、混合レタスとチマサンチェの苗をたくさん植えて、埋め合わせようと思っています。 | |
コンクリートの排水枡を転用した花壇で、イノシシはチューリップの球根を狙ったようです。サフランは避けていました。 | |
ほぼ仕立て直した畑。中央奥のトンネル栽培まったく被害がありませんでした。 | |
今年6月2日の妻にすっかりなついてしまったウリボウが、帰ってきたの違いない、と妻は密かに喜んだ節があります。それならもう少し丁寧に芋でも掘っておれば、妻はえづけてもらえていたはずなのに。 |