気まで休めて
 

 薪風呂は焚きあげるまでに2時間もかかってしまう季節に入っています。しかもその薪や柴は、自分で苗から育てた木を自分で伐り倒し、割って干し上げたものですから、ずいぶん手間ひまのかかる風呂です。それだけにありがたさが違います。そのおかげでしょうが、梵鐘とサイレンの違いのような差異を風呂で味わうことができます。

 梵鐘とサイレンの音は、ホーン数でいえば同じであっても、何かが大違いです。それと同じことで、薪風呂は気まで休めさせてくれる何かがあるのです。じんわりと温まってゆく湯の柔らかさ。そして熾(おき)火が保つ余韻のごとき温かみ。くわえて樹種によって異なる煙の香り。薪ブロはまるで大きな梵鐘の音に耳を傾けながらまどろむような気分にさせるのです。