温室仕事
 

 越冬させるために運びこんであったベンジャミンゴムなどの大きな植木鉢を、やっと整頓しおえました。整頓されたとはいえ、このような混んだ状態が、空気が温む3月半ばまでは続きます。

 この室内では、富美男さんがくれたレタスやネギの小さな苗も、大きめのポットに分けて植えなおされ、育てられています。また、セイジ類、洞庭欄、そしてゼラニウムは節毎に切り分けられ、挿し芽されて発根をせまられています。あるいは、西洋サクラソウの自然生えの苗が長鉢に植えつけられ、喫茶店のテラスを飾る春を待ちわびています。

 冬の間は、ワークルームに代えて、温室が仕事場にされることがあります。その都度、必要とされる道具や機械が持ち込まれます。このたびは、電気砥石器の修繕でした。まず故障の原因を突き止めるためにドライバーやペンチが持ち込まれました。そして、次の作業で必要とされる道具や機械が定められました。そこでいったん作業は中断です。

 この度は翌日になりましたが、ある時は昼食の折に、ある時はダイヤリーを確認するために、またある時は来客を迎えるために、と居宅に戻ったり喫茶店に行ったりした機会に、道具や機械が取り揃えられ、温室に戻ってから作業が再開されます。庭の南東にある温室と道具類が収納されているワークルームが対極に位置しているせいです。

 この面倒くささを私は大切にしています。「モノ忘れ」の進み具合を自覚するバロメーターになるからです。近頃は、たとえば、ある道具をとるために野小屋にゆきながら、行き着いたときに、何のために野小屋に来たのかをすっかり忘れていることが多々あります。その道中で、手を施すべき別の用件に気付かされたりして、先の用件がすっ飛んでしまうのです。そのような場合は、もう一度現場に戻り、用件を思い出し、再度野小屋に向かいます。この面倒くささを「モノ忘れ」をへらすもう1つの温室仕事と見ているのです。