キンマ
 

 私は幼少期に、小倉山から松材などを切り出すキンマ(木馬)や、キンマを操る光景を目の当たりにしています。とても危険な仕事で、命がけで携わらなければならない仕事と見ました。現実に大怪我をした人を見ています。

 この仕事は、携わる人にとってはとても厳しい仕事ですが、山、樹木、山の生き物、あるいは未来世代にとってはとても優しい仕事の仕方です。山の姿(景観)を変えませんし、伐採した跡には新たな芽吹きを促します。また、キンマもキンマを走らせた道筋に敷かれた木々もすべて自然に還っていました。

 余談となりますが、かつて『人と地球に優しい企業』という一書をしたためましたが、裏返せば、「自分たちには厳しい企業」という意味でした。21世紀はその厳しさが従業員の誇りに、経営者の自信に、そして見ていたのです。つまり、いくら儲けたかではなく、いかに儲けたかが問われる時代になる、と見ていました。

 大げさに聞こえるかも知れませんが、キンマの仕事は、人と地球に優しく、自分たちには厳しい仕事と、子どもながらに私は見ていました。それがこの山仕事に携わっていた人たちの誇りであったように感じていました。

 津川さんと話し合えたおかげで、この思いを彷彿とさせられました。同時に、こうした思いを子どもたちに感じさせる機会が、ああるいは感じさせる大人が極端に減っているようだ、と気付かされました。