東京に原発を
 

 私は原発反対者です。もし許容せざるをえないとすれば、条件があります。それは拙著『次の生き方』で触れています。決して皮肉な意見ではありません。

 原子力潜水艦があるわけですから、その技術はむしろ平和利用すべきです。送電に伴う設備や電力などのロスの削減、排熱の地域冷暖房への活用、そして徹底した安全性の追求などの合理化です。その可能性を、東京都など電力大量需要地で生かさぬ手はありません。現実問題として、これから始まる原発廃棄処分経費などを勘案すると、その方がはるかに安上がりに済ませられていたのではないでしょうか。

 まだ新聞報道では見かけていませんが、改めて生じかねない心配もありそうです。原子力発電所誘致時の賛成者と反対者の間での軋轢などです。原発設置はアメを舐めさせるような一面を伴っていたに違いありません。

 要は、このたびの悲劇は、ソロバン勘定が安全性よりも優先された結果であろうと思われるだけに残念です。それが人命軽視に結びついたことを反省すべきでしょう。ここで引き合いにしてはいけない事例かもしれませんが、戦時中の人命を軽視した必勝祈願兵器を連想させられたことを付け加えておきたく思います。

 ともに優先順位を間違えたことが生じさせた悲劇ではないでしょうか。