竹箒の折れた柄の補修
 

  178円で買った中国製の竹箒を、1時間余も費やして修繕しました。「バカじゃないか」と笑われそうですが、私はいたって真面目です。

 箒の柄である竹に虫が入り、折れたのです。これで2度目の補修です。1回目は、折れた部分で切り離し、竹の中空の部分に補強の木を挿し込むだけでおえました。今回は、新たに折れた部分から先の竹を切り取って、取り替えています。

 日本製の2000円近くする竹箒では考えられないことですが、きっと日本の仕入業者が、日本の消費者心理を読んで、中国の賃金労働者を「安かろう悪かろう」の立場に追い込んだのでしょう。同じことが、私がサラリーマンになった頃の日本で生じていました。その時は、日本がアメリカなどの仕入業者に「安かろう悪かろう」に追いつめられていたのです。1ドル360円時代でしたが、1ドルドレスをアメリカ向けに大量に輸出していました。

 その当時の悔しい気持ちが時々頭をもたげます。「次々と使い捨てられているのだろうな」との悔しい思いだけではありません。「次々と新品を買う方を、消費者は求めているはず」と輸入業者に見透かされ消費者の立場が悔しいのです。

 その悔しさが、次第にこうじて、結局それが、自然や、資源や、ヒトのココロまで蝕んでしまい、ここまで地球環境をダメにしてしまったのだろう、と私は思うにいたりました。その結果、お互いに自国の誠実な職人を次々と窮地に追い込んできたのでしょう。

 ですから、それでは「勿体ない」と私は考えており、大真面目にこうした修繕に取り組むようになったわけです。それが自国の職人や、相手国の低賃金労働者に対して私が払える精一杯の敬意のように思っているわけです。

 それが結果として、自己完結能力を私に高めさせましたし、生きる歓びの何たるかに気付かされたように思っています。第一、こうした努力をすることで、世界でたった一つの竹箒になったのですから。