空振り
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15日夜の見張りは、わずか3時間ほどでギブアップしました。物音ひとつしない15夜の下での見張りをしていると、いろんなことが思い出されました。 当初は、講義の骨を構想する時間にしていたのですが、2時間ほどした頃に、まず今は亡き10歳ほど年長であった源ちゃんを思い出しました。わたしが受験浪人であった50年ほど昔にも、よくイノシシが出没していた時期がありました。そのおりに知的障害者であった源ちゃんはしばしば野小屋で夜番をさせられていたのです。 夜間に勉強していた当時のわたしは、夜半の小用の折に屋外に出て、野小屋を覗き、源ちゃんだとわかると入り込んで半時間ほど話し込みました。「そういえば、源ちゃんは一度も居眠ってはいなかったなあ」と気付かされたのです。 その後、しばらくして、バッキンガム宮殿などで見た衛兵を思い出しました。微動だにせずに、長時間にわたって直立不動の姿勢を保っていました。「たいしたものだなあ」と 改ためて感心しました。 その後、1時間ほどはベンチコートのボタンをとめるなどして頑張りましたが、「そうだ」と屁理屈をつけて、屋内に戻りました。まず、「きっと妻は風呂を沸かして待っているにちがいない」と思ったのです。くわえて、「もうすぐ禁猟期間が終わる」と気づいたのです。「今に見ておれ、きっと仲の良い漁師が仕留めてくれるにちがいない」と思いました。その時は、お相伴にあずかるに違いありません。ならば「ニンマリしながら食ってやる」と思って気休めにしたわけです。 |
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