人工物に対する警戒心
 


 医学会でさえ近年まで、母体が取り込んだ毒物をへその緒を通してその胎児に移動させない、と思い込んでいたフシがあることです。きっとその期待は、自然界にある病原菌や毒物に限られたあらぬ期待であって、人工物や人間が大量に排出するようになった毒物にまで広げられない期待であったのはないでしょうか。

 それはともかく、水俣病そのものや、水俣病に対する誤解や偏見に苦しめられ、まさにのたうっていた女性の間では、カラダで覚え、体験的に採用していた痛みの軽減策があったのです。残念なことは、その痛みの軽減策を知らされた医者の中で、あらぬ期待を疑う人がいなかった、と聞かされたことです。その想いが「自然のいとなみ」になりました。