残念な思いをした分
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300余の感想文の多くは、とても前向きな意見でした。その中にあって、一風変わった意見が数点あり、とても心ひかれたり、残念な思いをさせられたりしています。次の2点は、残念に思った事例です。ともに「質問されることを期待し」て講義に望み、それを「誘引するように語り」、たっぷりと質問時間を設けたわけですから。 つまり、「素晴らしいご質問です」と切り出し、体験談を披露したかったわけです。この2点について、講義の中で触れてしまうと、「自慢話を聞かされた」と思う人(このたびも1人だけ生み出していたようです)を増やしかねない、と体験で知っているからです。 その一つは、土地の問題でした。つまり、「私には、願っても、土地がないからできない相談」とでもいった反応です。実は、日本には土地はたっぷりある。当周期でもこの点はこれまでに触れてきましたから詳細は割愛します。 質問で出ておれば、就職活動とからめて応えようとしていました。「就職難」と言われますが、それはおかしい。「若者が来てくれない」と嘆いている会社や工房などがたくさんあります、とまず切り出すつもりでした。問題は、求人できなくなりつつある企業、つまり大手の1部上場企業などを対象にして、「就職難」と叫んでいるのではありませんか、と言いたかった。それと同様に、多くの人が集まりたがる土地、つまり都会に住まうことを希望し、大きな土地は持てないから、と考えているのではありませんか。 限界集落が多発しています。国土の4割が、わが家のような、いわゆる里山的生活に生かせる、と環境省は視ています。それは1人あたり約3000平方m強、約1000坪です。 もう1つは、お金の問題でした。私がお金に悠然とした生活を送っているように見えたようです。「お金に不自由したことがないのでしょう。お金の問題で追い詰められたことがないから、そんな呑気なことが言えるのでしょう」とでも言わんばかりに意見でした。 そう言われればそうだなあ、と吹き出しそうになりました。そしてそのコツを伝授したかったのに、と強く思いました。それは、「お金で手に入るモノ」にはたいした価値がないことに早く気づくこと」。つまり、今日の「お金で手に入るモノ」は、大部分が「潜在的廃棄物」であると気付くこと、と語りたかったのです。 ドイツでは1994年に、国家から「新製品」の概念を法的になくそうとしています。これまで新製品と見てきたモノを「潜在的廃棄物」と規定し、そのモノを生み出す過程で出た「産業廃棄物」と、やがて「潜在的廃棄物」は見捨てられて「廃棄物」になりますが、今の世の中は「これら3つの廃棄物」で成り立っている社会、と規定しています。 余談ですが、「お金に苦労したことがないか」といわれればおおありです。その最大は相続時でした。20年の分割支払いにしてもらい、お金を借りて支払っています。要は、生涯収入の半分が税金に消えた人生、になりそうです。 ではなぜ、この土地とお金の問題に講義で直接触れなかったのか。それは簡単です。「自慢話を聞かされ」との勘ぐられたくなかったのです。なぜなら、私は、お金に振り回されず、ゆったりとした生き方をしたいがために「エコライフガーデン造りをライフワークに選んだ」わけです。そして、それを手に入れるコツや過程、あるいは意義や必然性などを突き詰めて考え、「文字にして大丈夫」と思ったことを本にしてきたわけです。ですから、私のように、好きな事をして悠然と生きているように見てもらいたければ「拙著を呼んでください」という感じになり、どうしても拙著の押し売りのような誤解を招きかねない。そう誤解される辛さや悔しさを、またぞろ経験したくなかったのです。 ですから講義の冒頭で、「今日の延長線上に未来がある、と思っている人は、つまり、今の不況は経済の循環上の問題であり、またいずれこれまでのような好況が巡ってくる、と思っている人は、どうぞ遠慮無く居眠ってください。ただし、イビキはご遠慮ください」と切り出しています。 もちろん居眠った人がいましたが、その他の多くの人は次のような反応を示しました。 社会に貢献できる人になりたい。たとえ小さな事でも始めよう、と思った。自分の値打ちを探したくなった。日頃から努力を惜しまないようにしたい。自分の求めていた視点はこれだ、と思った。前向きになりました。考え方が変わりました。私は、いままでの見方を少し変えようと思う。人生に大きな影響を与えてくれました。私の道が広がりました。これから必要なモノを教えてくれました。学ぶことを楽しいと思えるようになりました。これを活かして充実した大学生活を送りたい。内面を成長させてくれるキッカケになりました。自分らしさを大事にしてゆこうと思えた。自分の生き方を考えるようになりました。今の社会を見ることが出来ただけでなく、その後どうすれば良いのか、とても考えさせられました、など。 とりわけ心ひかれた意見は、「自分のいいたいことを言える人になりたい」と、「森さんのようになるのではなく、やるなら是非超えて行きたいと思いました」の2点でした。さらに、とてもこそばく感じ意見は、穏やかな気持ちになれました。周りの人への気遣いをから始めようと思いました。の2点でした。 |