話はとても弾みました
 

 この村で生活していた頃は、と案内してもらった藤井俊明さんは、「病気になることは恥ずかしいことでした」と語りました。「おフクロは、救急車を(呼ばざるをえない事態になったときに)呼ぼうとしたら『そんな恥ずかしいことやめといて』と、いいよりました」と付け加えました。

 この家で藤井さんは生まれ育ち、板前を夢見たわけです。そして街に出て、今や「割烹彦次郎」の主です。なのに、いまだに大見に惹かれ、真冬以外は毎年大見で出かけ続けています。こうしたことを知るにつれて、「彦次郎」の料理のありようや、その味の良さだけでなく、生活空間としての大見の価値がより深く理解できそうに思いました。

 トッテンさんは「農毒」という言葉を紹介しました。膝を打つ思いでした。かつて私は農薬散布を「消毒」と呼ぶことに対して、とても違和感を抱いたことがあります。「農薬」を「農毒」と呼び習わしていたら、「消毒」という呼び方はなかったはずだ、と思ったからです。もしあったとすれば、「農薬」はなくなっていたことでしょう。

 橋本宙八さんは前日の散歩でトッテンさんと出会い、大見の散歩に飛び入りしたわけですが、その元をただせば、福島原発事件、人災です。このところ「除染」という言葉が流行っていますが、それが適切な言葉か否か、心してかからないといけないなあ。