真のおまかせ料理
 

 明朱花(あすか)さんは、メニューに沿って食材の種類や量を見積もって仕入れるのではなく、品質が気に入った食材を手に入れ、その食材によってメニューを考えたい人のようです。ですから、「野菜サラダ」を注文しても、日によって使われている野菜の種類や配分はどんどん変わりかねない造り手、と言ってよいでしょう。

 たとえばおまかせ料理についてくる明朱花さんの「野菜サラダ」は、日によってどころか、時間によっても、使われている野菜の種類や配分はどんどん変わり、使われている野菜の種類や配分が「まったく同じ」はもとより、「酷似した」サラダも2度とでてこないはずです。にも関わらず、同じように美味しいだけでなく、食べ物の根本を満たしている。

 食べ物の根本とは、健康の維持に貢献し、体の不具合を癒し、病気にしない食べ物、ということです。

 それは、まるで創造力を駆使した優れた芸術品の範疇です。たとえばゴッホの「ヒマワリ」やセザンヌの「リンゴ」のようなもので、2点と同じではありませんが、作風には一貫性があり、同じような優れた価値を有している。

 真のおまかせ料理のできる人とは、「作り手」はもとより、「造り手」の段階にもとどまらず、「創り手」を目指しており、与えられた食材にそって、味見をせずに調理し、作風に一貫性をもたせ、同じように優れた価値を付加し続けられる人ではないでしょうか。

 もしそうだとすれば、明朱花さんは、真のおまかせ料理を期待できる「即興詩人のような調理人」の一人だと、私は思っています。