言行不一致
 


 かつて私はマーケッティング手法の転換が必要だ、といち早く打ち出しています。それまでの手法は、年齢、性、所得、職種、あるいは学歴など、いわゆる民勢統計(デモグラフィックス)的な差異を重視していましたが、もはやその時代ではない、代わってサイコグラフィックス手法の採用を、と提唱したわけです。

 それまでのように、若いから、男性だから、あるいは低所得の肉体労働に従事しているからジーンズを用いるのではなく、ジーンズを、熟年女性であれ、大統領であれ愛用するような時代になる。それはどうしてか。要は、新しいマーケティング手法を固め、転換する必要がある、といった提唱です。それがサイコグラフィックス手法でした。

 そのような提唱をしていながら、私は民勢統計的な発想から思考し始めていたようです。わが家の犬で言えば、妻は犬ごとの特色を、モノサシの差異には関係なしに直感で捉え、それで満足してしまう傾向です。ハッピーは、「ヤキモチやきの子」あるいは「怖がりの子」。ケンは「嗅覚の鋭い子」あるいは「爪を切る必要がある子」。そして金太は「賢い子」あるいは「一緒に散歩がしやすい子」など。

 私は、散歩のしやすいのはどの順番かとか、嗅覚実験をしたのか、あるいは「どうしてそう言えるのか」などと気がかりになり、まず犬の特色を掴もうとし、そこそこの納得ができた上で、個々の特色を見出そうとする傾向です。要は民勢統計(デモグラフィックス)的な思考から抜け出せてはいなかったわけです。