山本達也さんのレポート
 


2011.10.29 SAT 嵐山・アイトワにて 講師:森孝之氏、小夜子氏 M1 山本達也

オーガニック生活・社会デザイン論レポート

 観光地・嵐山の竹林を抜けて、散策道の延長上に「アイトワ」はあった。森であり、畑であり、自宅でありの空間に、入って来ていいよと思わせる人形館と喫茶店の存在。しかしながら、ズカズカと足を踏み入れるには憚られる雰囲気、威力を感じさせる場である。それはやはり人のパワーかと感じたところへ、微笑みかける小夜子さんが現れる。優しくて且つ凛とした態度に感動する。開始時間を間もなくとして、玄関付近の集合場所には、野良仕事姿で仁王立ちする孝之氏。その空気に触れた瞬間、今日の講義は本気モードでいかねばと感じた。やはり長靴を持ってくればよかったと後悔する。

 午前中は、作業を手伝う。古竹の整理と移動、自宅裏斜面の草刈り、畑の踏み石の置き変えなど。普段、里山の環境保全活動をしているので、竹の扱いや草刈りは慣れている。そこで、あまり経験のない踏み石の置き変え作業に手をあげた。飛び石状になっている踏み石を帯状に置き換える。一輪車を通りやすくするためか。さて、と思案し出来上がりを想像してみた。と瞬間に、新しく持ってくる石の色が、新しいが故に違っていることに気付き、例えば2つおきに並べたら見た目楽しいなと思いやってみた。作業を始めてからさらに気付いたことは、結果的に2つおきに並べる方が作業工程として合理的なことと、竹や草刈りの他の作業に比べ、踏み石の置き換えは「痕跡が残る」作業であること。再度訪れた際、自分のやった作業の痕跡があることは嬉しいし、また訪れたくなる。仕事を楽しくするヒントはそこにあるし、自分は何となくそれを糧に仕事を選び、やってきたのだなあと振り返りにもつながった。

 森の山菜でこしらえた昼食をいただいた後、午後は木々の下でお茶を囲んでの講義。孝之氏の生き方、人生を学ぶ時間であった。意思力、覚悟力、感受性、直感力などで数々の場面を切り開いてこられた。視聴覚偏重の教育を五感による教育に変えること、自分で主治医を決め予防することが医療であるというニュージーランドの制度のこと、竹の活かし方や効用がこんなにもあるのかという話、自然+科学で豊かな生活をすること、などが印象的であった。定年後に自然に立ち返るのでなく、総合商社でバリバリやりながら一方で田舎暮らしを続けるという両方の価値を行き来し続ける生き方が最も興味深い。ご自分の中では大いに共通する価値観もあるのであろう。土地と50年付き合うと、自然も自分の一部のようになるのかもしれない。そこにあるものすべてを資本にしていく面白さとバイタリティーを学べた。傍におられる小夜子さんの存在のこと、小夜子さんの人形に関するお話までお聞きしたかったが別の機会としたい。