よい機会であった
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まず、アイトワ塾生のご夫人方に、アイトワ塾での勉強の雰囲気を知り得てもらえたからです。塾では、家族同伴のバーベキューや忘年会を開いて来ましたから、塾員の顔ぶれなどは先刻ご承知です。しかし、足掛け24年間も続いてきたのに、勉強会そのものには、その片鱗にすら触れてもらえていなかったからです。 次いで、マクロビアンについて理解を深めてもらえたように思うことです。いわゆる民間療法には胡散臭いケースが多々あります。かといって西洋から導入した近代医学一辺倒のような現状でよいのか、との疑問を感じているからです。 もちろん私も、発病してしまえば近代医学に頼りますが、それは同時に反省の時であり、再発させないために努力を傾け始める時です。その時に意識するのが、治療よりも予防面に秀でた東洋医学です。このたびは、その典型としてマクロビアンを知りました。 欧米はこの点について先刻承知のようで、たとえばドイツでは西洋医学一辺倒の薬局はないように思います。東洋医学に基づく薬局を隣に同等のスケールで併設されているのが常で、消費者は自由に選択できるようになっています。 それはともかく、いわゆる無医村に住まい、5人の子供を医師や助産師に頼らずに産み、健康に暮らしてきたこの家族に感服です。末子が24歳になる(311で終の棲家を捨てる)までに要した医療費は家族全員で10万円(自然治癒が難しい歯科のみ)とか。 もう一点、西洋医学とマクロビアンの特色を垣間見るよい機械もあったのではないでしょうか。マクロビアンは、糖尿病を生活習慣病と見ていますが、西洋医学ではそうとは見ずに、原因は遺伝子、と見る傾向にあるようです。それは、いくら過食など不注意な食生活をしても発病しない人がいるようだし、その逆も真であるからです。戦中戦後も知っている私は、ならば余計に生活習慣病ではないか、と考え始めています。 たまたま翌朝の新聞で「肥満も遺伝」であり、生活習慣病ではないと言わんばかりの記事を見かけました。その時点で、糖尿病や肥満はまぎれもない生活習慣病、と自覚するに至っています。糖尿病や肥満になりやすい遺伝子があると分かった以上は、生活習慣を改めなければならない課題、と見たからです。つまり、「思っているけどヤメラレナイ」のが人情ですから、生活習慣病という命名でよさそう、と考えたわけです。 たしかかつては「成人病」と呼ばれていましたが、同じ症状をきたす子どもが増えたために「生活習慣病」と呼び変えられたと記憶しています。他方、「遺伝子」の解明が画期的に進んだ頃に、人生で生じるあらゆる現象を遺伝子のせい、つまり、人生のすべてが「遺伝子」の具現化、とでも言ったような見方もあったように思います。これからも、いろいろなことが科学的に解明されるでしょうが、それだけ余計に各人の自由意志を尊重する社会になってほしい。もちろんこれは、裏返して言えば、「遺伝子のせい」とうそぶきたいことをしばしばしでかしかねない自分であることを知っての意見です。 いずれにせよ、患者が増え、加療に経費をかけなければ医者の収入が増えない日本の医療システムは間違っている、と思います。それではわが国の健康保険システムの破綻は必定です。NZ、キューバ、あるいは欧州などのように、治療にではなく予防に重点を移すべきです。予防に献身する医者を高く評価し、その収入を増やすシステムに切り替えるべきです。さもなければ、日本の誠実な医者が気の毒です。 ところで、このまま放っておけば、新薬とジェネリック薬との間の葛藤や疑問が爆発しかねないように思われます。きっと医薬品会社は、のではないでしょうか。そして医者に安いジェネリック薬ではなく、売上を増しうる近似新薬を勧めるのではないでしょうか。 さらにいえば、医者は自ら薬剤の多用にブレーキを掛けざるを得なくなり、信用を落とさざるを得なくなるのではないでしょうか。予防が評価されず、薬剤の多用が収益増につながるとすると、自ずと薬剤の多用に走り、弊害を露わにさせかねません。そして、自ら多用にブレーキを掛けざるを得なくなり、「これまでの多用はなんだったのか」との印象を、つまり医者に対する不信感を、患者や社会に抱かせかねなくなるでしょう。 |
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