真の獣医さん
 

 この獣医さんは、相手にずる患者(イヌやネコ)中心主義で、その飼い主をムッとさせることが多いようです。ですから妻はもとより私も強く心を惹かれています。その奥さんに、このたび私はほめられたのです。

 床ずれは、ほんの1日か2日で発症することもあるようです。ケンの場合は、小便をたれ、そのまま妻が気づかぬままに寝そべっていた半日が発症させたようです。その毛が抜けて黒く変色した部分(15cm×10cmの楕円状)を破ると、蛆虫が沸いたりしかねないとか。その時点で、妻は四国に向かいました。

 そうとは知らずに引き受けた私は、妻の意を汲んだつもりで対応しました。それが功を奏したようで、ケンのかさぶたを破らずに済ませられたわけです。

 真の獣医さんの奥さんにほめられたのをいいことに、私はうっかり「苦労させられたからなあ」といってしまい、妻にこっぴどく叱られました。「ケンは孝之さんに苦労をかけさせたつもりはありませんよ」と来たわけです。「ケンは、ただひたすら喜んでいるだけです」といいたいのでしょう。思わぬ切り口に、いかに反応すべきか躊躇しました。いわれてみれば、「そうだなあ」と思っていると、次の攻撃がありました。

 「孝之さんはこの家の主でしょう。主が、住人に苦労をさせられた、なんて考えるのはおかしいと思いませんか」そして「それが主の役割でしょう」とたたみかけられました。

 その翌日のことです。妻に呼ばれて駆けつけると、妻はケンのベッドの手入れをしていました。そしてケンのお尻を見せました。ここを、妻は尻ではなく「腰」と(先週)呼んだわけですが、この点に関していえば、私にはまだ異論があります。

 ちなみに、今週は歯科医をおとずれており、虫歯の治療を終えました。その際に思いっきり口を広げさせられましたが、幸いなことに、唇の端は切れませんでした。これは、ケンの尻の薬を余らせたおかげ、と見て良いのでしょうか。