さまざまな動き
 

 まずかねてから心配してきた人形工房を目指しましたが、その途中で、緊急用中型水中ポンプの保管場所に立ち寄り、持ちだした上で、おぼつかない足取りで急な階段を降りています。テラスは水浸しでした。そこで、排水ポンプを人形工房の入口の前において、テラスの排水口の点検に向かっています。

 テラスには排水口が3箇所ありますが、その四角い穴開きのマンホールの主要な蓋がとれない。急いで、蓋を開ける3つの道具を取りに走ります。ゴムハンマーは温室に、フタを引き上げる金具はその途中にあるユーティリティ小屋に、そして鉄パイプは居宅の納屋に常備しています。その道中で、水中ポンプを井戸の底に落としてはいけないと思いつき、ザイルも取りに走っています。ザイルは、居宅の一番奥にある(風呂の焚口もある)ワークルームに常備しています。これらの道具はそれぞれ、正常時での使い勝手を考えて、一番便利なところに置いてあるわけです。

 滝のような雨に救われました。鉄パイプとザイルをとりに階段を登っているときに息が上がり、「そうか、私は身体障害者だ」と気づきました。喉がやけに乾き、心臓がパクパクしているように感じたのです。「慌ててはいけない」と心に言い聞かせました。そして、これらの道具はいずれも大した額ではない。もう1セット買い求めよう、と考えています。

 次いで、庭の最低部にある排水口の点検に向かい、驚きました。一帯が冠水していたのです。畑まで水浸しです。かつて妻を驚かせた光景です。臍のあたりまで浸かりながら排水口のつまりぐあいを点検しましたが、異常なし、と判断。次いで急ぎ温室を目指し、ツルハシとスコップを持ち出し、かつて畑まで冠水した時に備えて敷設した2本の排水パイプを点検しましたが、異常なく流れ去っていました。

 ひと通りの打つべき手を打ったうえでテラスに戻ると、「花ぐるま」が雨晒しになっていました。「そうか、昨夜は雨が降ってはいなかったンだ」と考えながら、花ぐるまを薪置き場の張り出しテントの下に避難させました。すでに豪雨で花が随分痛んでいました。

 やっとの思いで人形工房に踏み込んだのは、飛び起きてから既に10数分が経過していたと思います。