目を輝かせ
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この友人とは40年近くの付き合いです。伊藤忠の繊維部門で在籍中に、取扱商品の製品化を提唱しましたが、そのた時に幾つかの問題が生じました。この問題の1つとの関わりから始まった友人です。 取扱商品の転換は、業界地図を塗り替え、新たなライバルを造りかねません。この人は、そのライバルになりかねない強力な会社、オンワード樫山の社員でした。 私は伊藤忠で、ライバルになることを覚悟する前に、手を携える関係になる努力をするべきではないか、と提案し、任されました。そこで、オンワード樫山に新企画を持ち込見、弱点の強化を提案し、当時の樫山純三社長に認められます。結果、担当者としてにんめいされたのがこの人でした。 その後、欧州出張を度々繰り返します。2~3度フランスで、アミヤンというところまで一緒に足を伸ばしたことがあります。アミヤンにはゴシック時代の大聖堂があり、欧州における5大聖堂の1つとされています。そこに案内され、車から降りて、周辺に人の子一人いない環境で、巨大な扉を見上げながら、内部を覗かずに帰っています。 それを私はとてもくやんできましたが、この友人も悔やんできた、というのです。白亜の大理石で造られていたし、途方もなく大きな建物だったし、とても繊細な造りだったのに、どうしてお互いに扉を開けて覗こうとしなかったのか。 この度、彼はそれを「無知の悲劇」とでもいったような評価をしました。 その時に、原発問題もやがては「無知の悲劇」となるだろうが、あまりにも犠牲が大きすぎる「他力本願の悲劇」ではないかナ、と思いました。 |