剪定くずを燃やし切れた
 

 緑の天蓋の下にある囲炉裏場で、山のようにためてあった剪定くずを、手早く燃やし切るにはコツが求められます。乾き過ぎていると、炎が大きくなって緑の天蓋を焦がしかねません。また、急に風が吹いたりすると飛び火の危険性もあります。かといって、湿りすぎていると思ったようには燃えません。この度は、妻と2人で手分けして1時間ほどで無事に燃やしきり、酒の肴も用意しました。

 この日は、前日まで続いた天候とは違い、曇りがちな天候だけど雨は降りそうにはありませんでした。そこで、午後から庭に出て、まず私は積み上げてあった剪定くずのヤマをすべてひっくり返しておきました。ヤマの底の方はすっかり濡れていたからです。

 4時半に妻がオヤツを運んできた時に、その乾き具合を診断してもらうと、「調度良い湿り具合です」との応え。そして、「今夜は遅くまで起きている日ですから」と続けました。きっと妻も、このタイミングを逃せば、次はいつこんなチャンスに恵まれるか知れたものではない、と思ったのでしょう。しばらくすると野良着に着替えて妻が出てきました。

 急に強い風が吹きそうには思われない雲行き。剪定くずのヤマをひっくり返して置いたおかげで丁度良い湿り具合。しかも、前日の夕立で一帯の草木の湿り気は十分で、飛び火しても簡単には発火しそうにない。その上に、翌日にでも台風の影響で雨が振り出し、また剪定くずの山をびしょ濡れにしてしまいそうに思われました。

 私は早速ナタや植木鋏を持ち出し、過日の緑の天蓋の剪定で出たクヌギの枝をさばき始めました。太い部分は薪にします。妻は、私がさばいた葉のついた枝をおりまぜながら、要領よく炎をコントロ−ルしました。椿などの剪定くずは連日のように降った雨で葉を落としており、燃えにくい枝だけになっていたからです。

 半時間ほどした時に、「ちょっと火を見ておいてください」といって妻が居宅に引き上げました。熾(おき)がタップリできたのを見て、妻は気がついたのでしょう。案の定、「今日は(ジャガイモだけでなく)タマネギも焼いてみます」といいながらクッキングホイルに包んで持って来ました。夕食のメニューを急遽かえたようです。

 前夜の主菜はニシンとナスの炊き合わせでしたが、私は半分残しています。「おツレがある」と知りましたし、少し濃い目の味でしたし、ニシンの割合がまさっていました。また、畑には採り頃のナスが幾つもついていますから、「明日もう一度、味わいたい」と私は所望したのですが、それは明日以降にしたようです。

 ニシンとナスとか、コイモと棒鱈などの炊合せは、年に1度や2度は味わいたいものです。家庭の伝統、おふくろの味の伝承、あるいは文化の継承という意味もありますが、こうしたリズムが生きている実感を与え得るのではないでしょうか。