7つの演習課題を用意
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参加者はあらかた、技術や知識などの幅を広げようとしていたに違いありません。しかし私は、時代の「兆し」を感知してもらいたく願って取り組みました。そのおかげでしょうか、かねてから心の中でモヤモヤしていた霧のようなものが晴れた、と言わんばかりに目を輝かせて下さった人が複数いました。 まず1時間かけてアイトワのコンセプトを説明しました。古人の知恵と近代科学の成果をうまく組み合わせ、日々の太陽の恵みの範囲内で快適な暮らしを追求する試みをしてきたこと。この自然循環型の生活と、然るべき企業社会を組み合わせれば、より良き地球環境を未来世代に残せそうだと訴え、その然るべき企業社会のアイデアも説明しました。 次いで、これまでの社会は一種の「罠」であったことを説明しました。ですから、豊かと考えた生活を追求すればするほど、地球という生きる基盤を台無しにしていた、と訴えました。それは「欲望の解放」を「人間の解放」と誤解したせいで、肝心の各人が持って生まれた固有の潜在能力を持ち腐れさせていたことに気づいてもらおうとしました。 演習課題を8つ用意していましたが、1人が遅刻することが分かり、まず6つを提示して、6人に1つずつ選んでもらい、取り組んでもらいました。遅刻した人は子ども連れだと分かり、母と子で協力しあえる課題を残したわけです。また、8つ目の焚き火は、「熾」ができるまで私が担当することにしました。 エゴマの種取りを選んだ人は、自分で選んだ作業の仕方を最後までやり通しそうでした。そこで、私も技術を大事にしていますから、改めてみるように提案しています。この人が、これを機に、己の技や技術に対して常に疑問を抱く人になることを期待しています。その意識が、ロボットに侵害されない秘訣の1つのように見ているからです。 母と子に残した課題は、半世紀ほど前までの農業時代には、わが国では子どもの役割の1つにしていました。子どもはこうした役割をはたしながら、家族の一員としての己の存在意義を実感し、オーガニック社会の本質を身に着けていったものです。 焚き火については、無煙炭化器を紹介し、焚き火にともなう煙の効能、煙の是非を峻別する能力の大切さ、あるいは焚き火が「原初の調理法」であったことなどを説明し、危険性も伴いますから、私が担当したわけです。そして私がこしらえて熾で芋を焼いてもらい、異口同音に「こんなに美味しい焼き芋を!」との声や、子どもからは「お爺ちゃんのおみやげに」との声を発してもらいました。 もちろん、炎が人の心を癒す効能、野焼きの定義、本来の焚き火のあり方、どれだけの剪定ゴミがいかほどの熾や灰になるのかなどを知ってもらい、ゴミにする非合理の認識、体に良い煙を得るには農薬や殺虫剤などを用いられないこと、あるいは炭の効能などを説明しました。もちろん、これは大震災に備えた心構えのつもりで力を入れまいた。 1時間半の演習と1時間の昼食時間の後は、演習の仕上げを割愛し、16時まで意見交換に割きました。それは中座せざるを得ない人があったからです。 7人はいずれも「今日の社会」は閉塞していると見ており、改革を求めていました。しかしその改革の仕方が2派に分かれたわけです。「今日の社会」にどっぷりと浸かりきっており、その中で懸命にあがいている人と、「今日の社会」そのものに不安を感じており、根本的な打開策を模索していた人に分かれていたわけです。余談ですが、私の目に、確実に後者、と見えた人はいずれも女性でした。 ちなみに、オーガニック社会の本質は何か。その1つは、工業社会が大切にする目先の効率、比較、競争、あるいは費用対効果に惑わされないことだ、と見ています。そのようなわけで、わが家の生活を、「なんと忙しいスローライフ」と評されること喜んで受け入れています。その忙しさが、創造的であれば、喜びの源泉になります。 |
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母と子で協力しあえる課題 |
作業の仕方を最後までやり通しそうでした |
改めてみるように提案 |
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