冬野菜がひときわ美味しくなる季節
 

 好天の日は、トンネル栽培の野菜に直接日光を注がせるために、まずフレームを剥がすことから始まります。このところ、いつもフレームの押さえ石が寒さで凍りついており、フレームを持ち上げても落ちません。

 野菜はトンネルの中でも凍てついています。さぞかし寒風のもとで、裸で育てられている野菜は寒いことでしょう。野菜の細胞に含まれている水分が凍ってしまうのではないか、と心配になるぐらいです。野菜の細胞は大部分が水分ですから、凍って体積を増やせば細胞そのものがこわれてしまうのではないでしょうか。この心配をよそに、野菜は元気に育っています。元気どころか、冬野菜は霜にあたるにつれて柔らかくなり、美味しくなります。「それはどうしてか」と気になるところです。

 この疑問に答える正解であるのかどうかはわかりませんが、「ひょとすれば」と、思わせられるフシにこのたび気付かされました。野菜は細胞の水分が凍りそうになる前に、細胞内の水分を減らす工夫をしているようなのです。

 凍てついた朝に、路地の野菜を見ると、細胞内の水分が膨張してピンと張ってコチコチになっているかと思いきや、そのまったく逆で、しおれたようになっているのです。しかし、朝日が射し始めると、見てる間にといっていいほど早く、シャンとした元の姿に戻ります。本来ならば、この逆であるバズなのに、不思議です。

 そこで考えました。きっと冬野菜は、水分が凍って膨張し、細胞を破壊される前に、細胞の水分を減量する仕組みを自ら備えているのではないでしょうか。ですからしおれたような姿になる。しかし、日が射し始めると、一刻も早く細胞に水分を満たし、葉をピンと張り、陽光をできるだけ多く受け止め用途するに違いありません。

 その繰り返しが、霜に当たるたびに冬野菜を軟らかくしたり甘くしたりして美味しくするのではないでしょうか。溶け込んだ糖分が多くなるほど、その水分は凍りにくくなる、とかつて聴いたような記憶もあります。

 健康に良い野菜とは? とよく考えます。現在市場に出回っている見かけを良くするために腐心している野菜ではないように思います。良い野菜はえてした虫に襲われますが、虫に襲われてもたくましく成長します。虫に襲われて成長が止まる野菜は、自然界から淘汰されるべき野菜ではないでしょうか。襲われてもむくむく育つ野菜は、美味しくて滋養に富んだ野菜かも知れません。ですからわが家では、たとえば「レースハクサイ」などと呼んで、喜んで味わっています。
 

押さえ石が寒さで凍りついている

野菜はトンネルの中でも凍てついています

しおれたようになっている

シャンとした元の姿に戻ります

「レースハクサイ」などと呼んでいる