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 赤いそら豆、麹の種、そして料理釜 13/02/17

 冬の京都らしい晴れの1日から始まり、曇天の1日で終わった1週間でしたが、トピックスが5つもありました。3件の来訪と2件の訪問です。来訪は、「身予防美学」の提唱者・川上文子さんを迎えた日曜日。麹の種を持って乙佳さんが久しぶりに立ち寄ってくれた月曜日の午後。そしてピザ釜を築くために陶芸家の村山光生さんを泊りがけで迎えた金曜日でした。訪問は、とても整備が行き届いた大阪のとある試験機関を訪れた火曜日の午後。そして週の中日の2日です。後者は、これから立ち向かうべき時代への備えを訴えたくて、泊りがけで訪れた関東出張です。この間に、心臓の定期検診と折れた犬歯の緊急治療のために2人の医師の世話になっています。そして週末は、夕刻からアイトワ塾の合宿で、行き付けの大原の民宿を訪れます。

 週初めは、陽光が射しているのに粉雪がちらつく1日でした。花瓶のふだん桜が満開のワークショップに川上文子さんを迎え、久しぶりでゆったりした時の流れを楽しみました。妻も交えて3度のお茶の時間と昼食をともにしながら、チラチラと燃える薪ストーブの前で、さまざまな話題に花を咲かせました。熊本の「出水(いずみ)からバスとフェリーで2時間弱のところ」との故郷で、「母が繰り広げる健康的な生き方」とおっしゃる自給率が高くて、自活力に富んだ簡素な生活は、食と健康への想いを彷彿させられました。この目で確かめたくなりました。

 月曜日のその電話は私がとりましたが、妻が即座に「乙佳さんでしょう」と言い当てました。麹の種を届けるために軽トラックで駆け付けた彼女は、「膨れてるでしょ」「7月・・です」と臨月と予定日を教えてくれました。思わずそのお腹に手を当てました。彼女は今、2軒のお宅の建設工事に携わっているようですが、これまでとは少し仕事への関わり方を変えたようです。受胎が自分の役割を見直すよいきっかけになった、とのことです。オ・メ・デ・ト・ウ。

 この度の病院通いでは、様々な検査を受けましたが、大きな変化はなし。もちろん、過日の異常な体験を、妻に促されていた通りに報告しました。その足で歯科医に走り、仮の歯を入れてもらい、今後の治療計画を聴きました。犬歯を失いながら、野生動物と違って、私はのうのうと生き続けている。未来を見通すことができる人間であるが故か、環境を破壊しながら、差し歯で旧に復そうとしている人間の性を、ちょっと不思議な気分で見直させられました。

 だからかもしれません。これから立ち向かうべき時代への備えを講じに出かけた日は、マザーテレサを思い出しながら、人間を語ろうとしてしまいました。きっと、己に言い聞かせたかったのでしょう。たしか彼女は、いつもの服装でノーベル賞を、いつもの態度で受け取っていました。

 出張から帰った木曜日の夜、夕食の後、妻と雨に備えてひと仕事しました。翌朝8時40分に村山さんを最寄りの駅で迎え、ピザ釜を築く日なのに、雨との天気予報であったからです。妻の手を借りて、野小屋から折り畳み式ビーチテントを持ち出し、カフェテラスで組み立てました。次いで、耐火煉瓦を、一輪車で、幾度にも分けて運び込みました。ぐったりして布団にもぐりこんだのに、なぜか眠りつけぬままに悶々としていると、里帰りから戻った書生の気配を感じました。

 ピザ釜には耐火煉瓦は不要でした。その倍ほどの量の通常の煉瓦を、書生が運んでくれました。私はもっぱら、必要な道具などを、村山さんの指示にそって取り出してくる役目で、煉瓦を用いるこの日の作業は、村山さんと書生の手で、夕食の時間までに終えました。ピザ釜ではなく、ダッチオーブンも放り込める料理釜であったことを知りました。4人で夕餉となったのですが、私はたちまちグロッキー。一風呂浴びてバタンキュー。でも、週末の今は4時に目覚め、いびきをかきながら眠っているケンのそばで、週記をしたためています。朝食は7時前から。


中華ごはんと野菜スープ

 「シカクマメ」の種
川上文子さんとの昼食は、中華ごはんと野菜スープ。土産に、郷里の「赤いそら豆」の種ももらいました。お返しに、滋賀の瞳さんからもらった「シカクマメ」の種を、お母さんにおすそ分けしようかな、と考えています。

乙佳さんと久しぶりに会いました。もうすぐお母さんになります。彼女は一段と、手前味噌作りなどに拍車をかけることでしょう。

雨で迎えた金曜日の朝。村山光生さんを迎える前のカフェテラスの様子。薪置き場の常設の引き出し式テントと、移動式ビーチテントをかくのごとく組み立てました。このつなぎ目から雨水が垂れないように一工夫しましたが、有効でした。


天板の上に、2重に煉瓦を並べる
 
型枠の上にアーチを組む


アーチが組みあがると直ちに型枠を引き抜く

天板の上に、2重に煉瓦を並べることから窯づくりは始まりました。次いで、耐火漆喰で煉瓦を固めながら型枠の上にアーチを組んでゆきます。この折に、型枠を引き抜きよくする木片と、アーチの形態を安定させる小石を活かすところが1つのコツです。ダイヤモンドカッターで煉瓦は簡単に細工できます。アーチが組みあがると直ちに型枠を引き抜きます。


表に扉を取り付ける
 
裏側に煙突を立てる煙道を設ける


村山さんの友人ご夫妻が見学

表に扉を取り付け、裏側に煙突を立てる煙道を設け終わると、煉瓦を用いる基礎工事は終了です。3度のお茶と昼食の時間を挟んで、延々9時間に及ぶ作業でした。煙突には、ダンパーを設けて、火力調整ができるように工夫してもらいました。こうした作業の最中に、料理釜づくりでは先輩との村山さんの友人ご夫妻が見学にみえました。

並行して、刻んだ藁を加えた赤土に水を加えて練り、壁土の用意を始めました。赤土は、過日仏大生に掘り出してもらったものですが、妻に篩(ふるい)でこして運んでもらっておいた分では「3分の1にも満たない」といわれ、急いで書生ががその倍ほどの土を用意してくれました。


アーチが完成

内部の、煉瓦の隙間に漆喰を詰める作業
アーチ内部の、つまり料理釜の内部の、煉瓦の隙間に漆喰を詰める作業を見ているときに、商社勤めから始まった人生であったとおっしゃる村山さんの、芸術家としての本質を彷彿させられました。創造力の駆使と単調な作業の反復が、人間たるゆえんの無上の喜びを内発させるのでしょう。翌週末の午前中に土壁を塗り上げました。あとは乾燥と煙突の設置、土壁の仕上げ、そして土壁を 塗れなかった部分を、薪がなくなった折に、塗り上げれば完成です。

土壁の仕上げ

完成