野菜の苗を植えるために私はシャベルを用いますが、彬さんは素手で植えます。トマトの「雨除けの覆い」や、キュウリとゴーヤなどの支柱を作りましたが、私は目測で作りますが、彬さんは紐を張って正確さをきします。一段とかげで、畑が夏らしくなりました。
ダイコンを間引いていましたが、ダイコンが根を張る方向を双葉で読み取れるそうです。私はこの歳になって初めて、ダイコンが土の中で根を張る様子を連想したのです。
パワーもすごい。「井戸枠花壇」の1つを(アイビーとセージを根ごと抜き去る)模様替えして、ローズマリーを植え付けましたが、2時間仕事でした。今の私なら、数時間仕事でしょう。
よく勉強もします。焼酎の湯割りを楽しんだ夜のことです。常緑樹と落葉樹を話題にしました。南方では四季がなく、パパイヤなどは1年中、背を伸ばしながら次々と花を咲かせ、実を結ばせ、実を大きく育ながら熟れさせています。要は、1本の木に蕾から熟れた実までつけているのです。竹は常緑で、これから落葉期に入りますが、筍を出してから5年ほどで枯れます。クヌギは落葉樹で、いま新芽を吹かせ、新緑を茂らせつつあります。こうした事例を語りながら、「クヌギを南方で育てたらどうなるのか」などと語らいました。
すると、翌朝のことです。南方にも落葉樹がある、と教えてくれました。ただし、日本では冬に落葉しますが、南方では蒸散作用で水分を失うのを避けるために日照りが強い時期に落とすとのこと。また、ツバキなどの葉は、芽吹いてから5年ほど炭酸同化作用をして役割を終え、落葉するとか。この話題は、発砲ワインを空けた金曜の夜から土曜にかけてのことでしたが、彼は寝坊で週末を迎えており、私が起こしています。
「銅葉」とはよい総称だと思い、これも話題に取り上げました。わが家には、銅葉のカエデ(デシオ)と普通のカエデがありますが、山菜では、ワラビやウドは緑と「銅葉」の2種が出ます。ここに三つ葉も銅葉が加わることになりました。
動物には赤い血(鉄を核にしたへモグロビン)と、カニや貝などの「青い血」(マグネシウムを核にしたヘモシアニン)がありますが、植物は青い葉緑素(クロロフィル)とは別に、「銅葉」の品種が多様にあるわけです。この「銅葉」の核は何か? と興味津々です。
彬さんは力持ちです。温室の東面を模様替えするための切り石を買い求めましたが、両手に各1本をぶら下げて歩く握力を備えています。妻によれば、若いころの私も同様であったそうですが、今や1本を両手で抱えて運んでいる有様です。それはともかく、切り石の値上がりが、このところものすごい。つくづく65歳で学校勤めを辞めてよかった、と思いました。その1つの小さな理由は、石と関係があります。まだ力がある間に、石を用いた庭の造作を済ませたかったし、いずれ(輸入元の中国の人件費が上昇し)早晩切り石は値上がりする、と読んでのことでした。
ですから、温室東面の改装計画が持ち上がるや否や、「善は急げ」とばかりに、彬さんと買いに出かけています。案の定、すでに5割近く値上がりしていましたし、その品質のほど(機械を用いて切ったり、ノミで削る作業を大幅に減らしたりしており)を勘案しますと数倍に値上がりした、と見てよいでしょう。もちろん、この事情も彬さんに話しました。
集中力もありそうです。週末は、午前中と、午後の畑仕事の後の時間を、風除室のガラス磨きに当てていましたが、その仕事ぶりからそう感じさせられました。優しさも、先代の書生・伸幸さんと同様にあふれています。
そのようなわけで、楽しいことが多く、今週は休肝日を3回設けるのがやっとでした。
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