慈雨が続いたのを幸いに
 


 この旅の雨は、一粒も無駄にせずに、庭の土に吸収させられたであろう、と思われます。それは、わが家の幾種かの雨対策の装置が教えたことです。

 1つは、オレンジ色のプラスチックプールや水鉢です。おおよその雨量が読み取れます。火曜日の雨量はほんのわずかでした。その後、断続的に、木曜日の昼すぎまで降りましたが「たったこれしきの雨?」と驚かされたほどです。

 2つ目は、わがやの素焼きの甕(かめ)など雨水タンクです。この素焼きの甕は120枚分の屋根瓦に降った雨を集め、そのすべてを流し込みます。瓦120枚分といえば、面積にすると畳3枚分に過ぎません。しかし、火曜日の雨で、「なんと!」と意外に思うほど、つまりほとんど空の状態にまで水を汲みだしておいた甕なのに、3分の2ぐらいまで水が溜まっていたのです。

 わが家では、この甕の水を汲みだして中庭にある鉢植え植物の水やりなどに生かしています。ですから、「数日後に雨」などと分かったり、好天が続いたりすると、水深が10数cmになるまで水を汲み出してしまいます。それは、この甕が構造的に(人目につく位置にありますし、面積の割に深いので)飼っている金魚が猫や鳥など外敵に狙われずに済みますから、常日頃から底に溜まった落ち葉などを掬い取っておいて水が濁らないようにしています。

 3つ目はわが家の泉です。泉と言っても、コンコンと水が湧いているわけではありません。土中に浸み込んでいる水分がジワジワとしみだし、溜まる泉です。ですから逆に、渇水期は水位がジワジワと低下してしまいますから、土中の乾燥具合を知るバロメーターにしています。その水深が10cmほどになるまで水位が下がっており、火曜日の雨のあとも下がり続けているのではないか、と思われたほどです。なにせこのところ長い間、雨に恵まれていなかったのです。

 4つ目は、井戸枠水槽と呼んでいる(1.5トンほどの自然水を溜める)水槽です。ここに溜まる水は2種で、直接降り込む雨水と、泉のあたりの土中の水分を暗渠で集めて流れ込ませる水です。この井戸枠水槽が真にわが家の土中乾燥具合を知るバロメーターです。泉は枯れることがあありますが、今までにこの水が枯れたことはありません。この度も、水位が数cm下がっていた程度で、火曜日の雨の後も、その水位は変わったようには見ていません。

 これらに加えて、わが家では舗装部分を極力減らしています。しかも、落ち葉を残しておき、雨水を降るしりから吸収しやすくする部分を極力多くするようにしています。

 木曜日の午後3時ごろのことです。川上さんご一行を見送ったあとで、「まだ間に合う」とばかりに泉の掃除を思いついています。そのわけは2つです。まず泉に棲まわせている金魚のことを思いました。泉の上には常に金属製の網をかぶせているとはいえ、水位が下がって上空から丸見えでしたから、金魚にしてみればさぞかし怖かったことでしょう。これ以上水位が下がったらどうしようとの、枯渇の心配もしはじめていたのではないでしょうか。

 2つ目は、慈雨が続いたことを幸いに思ったわけです。久しぶりのシトシト降り続ける雨でした。総雨量はたいした量ではないのに、わが家の庭に降ったほとんどの雨を、ほぼ100%吸収したはずです。その総量は、素焼きの甕から推定できます。水道水でまかなおうとしたら、大変でしょう。同時に、シトシト雨は、表土を削りながら流れ去るようなことがありませんから、助かります。

 今ならまだ、泉の水をかい出して、底に溜まっている泥や落ち葉を取り去りやすい、と思いました。台地はスポンジのように雨水を吸ったようですが、まだしみ出させるまでには至っていない、と見たからです。つまり、かい出している途中で水がしみだしてくることはなさそうだ、と見たからです。

 2匹の金魚(うち1匹は子持ち?)と1匹のメダカ、そして2匹のイモリが出てきました水をかい出し、泥や落ち葉を掬い取り、その上で水道水を金魚が安堵するぐらい注ぎ込みました。その水が大地に吸いとられる恐れはなあそうです。そこで、金魚とイモリを戻しました。1匹のメダカは、仲間がたくさん棲んでいる水槽に移動させました。

 


オレンジ色のプラスチックプール

わがやの素焼きの甕(かめ)

わがやの素焼きの甕(かめ)

わが家の泉

水槽

2匹のイモリが出てきました

水をかい出し、泥や落ち葉を掬い取り