磨きをかけること
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妻は、私の昼食を用意する昼時と、午後のお茶の時間になると居宅に戻ってきますが、この夏はそのつど「生きていますか」との冗談口を飛ばしました。妻は冷房が効く人形工房から、冷房機のない居間に戻ってきて、その暑さに閉口するのでしょうが、何とか今年も耐えられました。 母は、10年余も前の暑さであったに過ぎないのに、「この夏は越せん」とよく嘆いていたものです。でも、冷房機を付けさせていません。(それが温暖化を防ぐ一助、との考え方もありますが)この暑さに耐えることが、冬の風邪に打ち勝つ秘訣だ、と思っているからです。 もちろん、他にも、よろしき実感を倍加させます。陽が落ちると、木陰の効果でサーッと一帯が涼しくなりますから、50年もかけて木を育ててきた努力を振り返えらせてくれます。 実は、先週末からサルが出没し、屋根から飛び移れないようにするために、柿の太い枝を切り取りました。しかし、サルを気の毒にも思っています。囲炉裏場で(切り取った)柿の太い枝を整理しながら、青柿が10も着いていたことを知り、「これだけあれば、サルなら2日は命をつなげたはず」と思ったからです。とはいえ、直ちに、「ここまで(餌付けするなどして)数を増やさせてきたのは人間であるから」と思い直しています。 かつて、天国とは「したいことが」いっぱいあって、「好きなようにできるところ」であってほしい、と触れたことがあります。もっとも、その好きなことが2つに分かれ、ヒトサマから、いわんや自然の摂理にてらして、顰蹙を買うようなことは許されてよいはずがありません。 ですから、正確に言えば、天国なんてあるかどうかわかりませんから、天国でも「これなら顰蹙を買わないだろうと思える範囲を」意識しながら、「生きている間に、一足先に天国にいる気分を味わってやろう」との思いで庭仕事に励んでいます。 この3日間も、誰にも干渉されずに好き勝手なことを、思いつくままに行いはじめました。その順番は正確には思い出せませんが、こまごまと動いています。 まず、学生が切り取った柿の太い枝を始め、これまでの剪定で出た剪定屑のすべてを整理しました。エンジンソーなどを駆使して切り刻み、燃料として備蓄しました。 学生が切り取った竹を整理して、畑の支柱として生かす部分と燃料にする部分などに分け、その用途にあわせて、ナタで始末しています。 学生が切り残した柿の枝の付け根を、カサブタができやすい手術を施したごとくに、エンジンソーで切り取りました。これは少し危険な作業です。 日本製の既製の「竹ぼうき」がいよいよ使えなくなりましたから分解し、その作り方をマスターしています。その折に、この作り方を知らずに無人島にでも移住していたら、いかにホウキを創り、何本目でこの造り方を会得できていたことか、なおと考えて愉快になっています。 雨が降る前にと考えて、妻に焚き火をしてもらいましたが、翌金曜日に雨が降りだし、それだけのことで、ご機嫌になっています。おかげで、焚火を始める前は足の踏み場もなかったような囲炉裏場が、すっかり片付き、無煙炭化器を取り除けば、立派なBBQ広場になりました。 もちろん、この場所は震災時にテントを張れることを第一義にしています。とはいえ、このあるかないか分からないことのために私は時やエネルギーを割く気にはなれず、より確かな効果を求める質であるようです。この二段構えの動き方が、なんだか天国で過ごして時間でもあるかのような気分にしてくれます。 水島さんがコンクリートを打ち始めたことに気付き、生コンクリートを少しわけてもらい、囲炉裏場の改装作業で最後に残っていた作業、鬼瓦の固定作業で見落としていた部分、三つ巴の軒瓦の固定に生かしています。 囲炉裏場にあった赤土の整理もし、被せてあったブルーシートを片づけています。 腐葉土屋の手入れもし、今年分を積み上げるスペースに、妻がかき集めた常緑樹の落ち葉を積み上げ始めています。 過日、コウウクリート製の踏み石の補修をしたことを通りがかりに気付き、引き返すときにシャベルなどを持参して、仕上げの掃除をしています。 屎尿タンクの周辺を整理し、シーズンを終えた植木鉢の冬越し場の1つにしています。 こうしたことを、目についたり気がついたりするたびに、庭を行ったり来たりしながら片づけました。無心になってこうしたことに打ち込めていることが、あるいは打ち込めることがあることが、私にとっては天国のように思われるのです。 逆に、こうした打ち込み方ができない事情がある場合も体験していますが、それは地獄か地獄の一歩手前、と言ってもいいのではないか、と振り返っています。 もちろん、近ごろは心臓の具合と相談することが増えており、「無心に」とは言い切れません。それは加齢による問題でも同様です。しかし、それが逆に自制力を働かせ、より天国にいるような気分にさせる、と言えそうです。 このたびは心臓の具合で、一休みせざるを得なくなることがありましたが、それが「竹ぼうき」を分解する気にさせており、座り込んで、根を詰める気になっています。 |
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燃料として備蓄しました |
燃料として備蓄しました |
用途にあわせて、ナタで始末しています |
エンジンソーで切り取りました |
エンジンソーで切り取りました |
分解し、その作り方をマスターしています |
足の踏み場もなかったような囲炉裏場 |
すっかり片付き |
三つ巴の軒瓦の固定に生かしています |
踏み石の補修をしましたが、仕上げの掃除をしています |
植木鉢の冬越し場にしています |
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