安倍首相は、シリアの化学兵器使用を非難し、支援の大金を申し出ました。女性問題を取り上げ、輝かしき立場を得られるわが国にする、と誓いました。さらに、北朝鮮の邦人拉致問題を取り上げ、この解消なくして安倍政権の存在する意義はあり得ない、とばかりにぶち上げました。それ自体に、何ら私は意義をさしはさみません。賛成です。
ただし、これら3つの課題について日本の首相が言及するとすれば、心ある外国人が一様に思い出す過去があることに配慮しなければいけない、と思うのです。さもなけれべ、心ある外国人に、心の中で冷笑されるだけでなく、国内では誤解を広げかねません。
シリアの化学兵器使用を非難するなら、わが国が中国で繰り広げた化学兵器作戦に言及すべきです。わが国は太平洋戦争終結までの間に、中国人を1000万人以上死なせており、その過半を化学兵器の犠牲にしている、と見られています。そして、わが国はその証拠隠滅のために、逃げてくる前に埋めてきた残存兵器があり、その処分に従事させられています。
女性問題を取り上げるなら、従軍慰安婦問題にも言及すべきです。1人でもそのような心境にした人を生み出した戦争を反省し、わが国はそうしたことを2度と繰り返さないために憲法9条を堅持している、と語りかけるべきです。
北朝鮮の邦人拉致問題を取り上げるなら、わが国の731部隊(細菌兵器部隊)にも言及すべきです。731部隊はその人体実験のために、大勢の中国人を拉致し、実験台にしています。その保障のためにこそ、まず進んで補償金を用意すべきではないでしょうか。
こうした歴史認識を明確にすれば、世界はこぞって日本を「自信に満ちた国とみなして尊敬し」わが国の「未来世代への負の遺産」を残させずに済ませることでしょう。それどころか、多くの日本人の、とりわけ若者の心に、真の意味での愛国心を育てることでしょう。
第一、それが我が国にとっては次第の安全保障になるはずです。
第二、こうした配慮や反省を欠いたままでは逆効果になりかねません。「日本人がそんな残虐なことを外国でするはずがない」との誤解を国内で蔓延させかねないし、若者の心に厭戦観念を育ませることができず、間違った方向にまた走り出させない国にしかねません。
それはともかく、9月19日の毎日新聞は、1面トップで「仏、核のゴミ最終処分場」を報じました。10万年先へ耐久試験が始まった、との知らせです。私は「どうするのだろう」と他人ごとながらフランスの原発を心配していましたが、「ご苦労さま」との心境に変えさせられました。
それに対して、選挙圧勝で第3期目に入ることになったメルケルさんはたいしたものだと思います。「原発をやめると決断してよかった」と福島のその後を見て語っています。
それらに対して、安倍首相は惨めすぎます。小泉元首相は、自衛隊を海外派兵するについて議論が紛糾し、危険地域が問題になった時に、「自衛隊を派遣するところが安全地帯です」と開き直り、それで審議を収束に向かわせましたが、それに引けを取らない。
また、安倍首相は、オリンピック招致スピーチで、原発事故問題に関して「ブロック」と「コントロール」という言葉を簡明に用いましたが、未だに訂正していません。それもそのはず。その用い方に勝手な解釈を持ち込んでいるわけです。このやり方に倣って(ヤケクソ気味に)いえば、ついには「地球内にブロックしています、とでも言えばいいや、と知恵をめぐらせているのではないでしょうか。
|