深呼吸の何たるか
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思わず深呼吸をしていたのですが、その時になぜか過去を振り返っています。それは呼吸を自律神経には任せられそうにない、という恐怖感でした。意識的に呼吸を繰り返さないといけなかったので、「眠れば死ぬ」と思うに至ったときの思い出です。妻に救急救命センターまで運んでもらいましたが、なんと肺に水が溜まっており、空気を吸い込めるスペースが何分の1かに減っていたのです。 この度は逆に、思わず深呼吸を繰り返しており、何かを胸いっぱいに吸い込みたくなっていたわけです。それは何か、と考えました。入院した時は、酸素を必要量取り込むために、自然呼吸では間に合わなかったのでしょうが、この度を何を取り込みたかったのか、と考えました。 これこそ本来の呼吸に思いを馳せたことになるのではないでしょうか。大げさな言いようになりますが、カラダがその何かを勝手に取り込みたいと思ったかのようで、思いっきり吸い込んでいたわけだ、と考えたわけです。 この時は舞鶴さんが編んだ毛糸の帽子をかぶって玄関を出ていますが、まず冷え込みが少し和らいでいる、と感じました。それは無風状態になっていたからだ、と理解しました。玄関脇を振り返ると、ハッピーが丸くなって寝ていました。そこで、2度3度と声をかけています。 ハッピーには折に触れて声をかけるようにしていますが、耳がかなり遠くなっているようだし、よく眠りこけています。反応がなければ、声をかけ直すだけでなく、そばによって体をつつくことにしていますが、この時は尾ッポを少し立て、かすかに振っていました。 大きく息を吸っていた自分に気付いたのは温度計道のスロープを下っていた時のことです。やがてそのわけが分かりました。取り込みたかった何かが分かったわけです。まず、妻が風呂を焚き始めていたことに気付かされています。風呂の焚口は居宅を挟んで温度計道とは反対側(の山手に)ありますが、無風状態が煙の臭いを一帯にかすかですがたなびかせていたわけです。 「きっとそうだろう」と考えながらさらに深呼吸を繰り返し、一歩一歩温室までゆっくり歩きました。そして「きっとそうに違いない」と頭にピンとくるものがあり、居間に戻ってから妻に質問しています。案の定、風呂を焚きつけており、杉の木の薪をくべていました。 ですから、この空気をスギ花粉症の人に吸ってもらいたい、何年間かにわたってこの香りをかぎながら暮らしてほしい、と思いました。同時に、近き将来、この空気に含まれている成分が、スギ花粉症のいわば解毒作用のような効能を有していたる、と言うことが立証されるに違いない、と考えています。そのように感じるほどの心地良い空気でした。 |