ゆっくり会話ができた

 

 前回は20年ほど昔のことでした。アイトワが誕生して数年目のことでした。拙著『人と地球に優しい企業』を読んでアイトワにご興味を抱いてくださり、訪ねていただけた、と聴かされていました。大学で教鞭をとっておられる人で、当拙著を学生にも紹介している、とのことでした。この度もご夫婦でお見えになり、学生の保守化(?)に驚いている、とのご意見を述べておられたとか。

 『人と地球に優しい企業』は「幸せになろう」との呼びかけでした。その秘訣の紹介でした。安倍政権は、そのまったく逆の方向へと国民を導きながら、それが幸せに結びつく唯一の道であるかのように演出している。にもかかわらず、それを学生までが歓迎ムード、とのご心配であったように、私は受け止めました。

 人と地球に優しくなるということは、自分たちには厳しくなる。しかし、その厳しさが従業員の誇りになり、経営者の自信になり、社会における存在意義にしましょう、との提案でした。世の中で、なくてはならない存在となり「幸せなになろう」との呼びかけでした。

 ところが今の多くの学生は、世界や日本の未来を明るくすることではなく、今の己の経済的安住を希求している、と危惧されての声であったようです。要は、いずれは乗っている船を沈ませかねないのに、己の座席の確保にしか目が向いていない、とのご心配です。つまり、世界のすべての人が真似たらたちまち地球をパンクさせかねない生き方をいまだに守ろうとしている、との不安の表明をされていたようです。

 そういう気分にさせている安倍政権を恨めしく思っておられるとすれば、私は同感です。そのご不安やご心配は、その日の夕刻あたりから一つの形として露わになりました。

 それは捕鯨問題です。日本のやり方は世界から厳しく糾弾されました。その結果を知って、安倍さんは失望し、関係審議官を厳しく叱責したとか。それは本気でしょうか。

 こうした答えになることは、自明であったと思います。捕鯨の歴史、地球環境の現状、あるいは人類の成長史などを紐解けは、必然の帰結であったと思います。


  捕鯨問題については、当週記では2008年2月10日分から触れ始め、2010年12月12日分にいたるまでに計6回にわたって触れています。