女性の時代になりそうだ

 

 アイトワ塾のコーヒータイム(塾のディスカッションが終わった後)で、痛切に感じさせられたことです。ですから、過去数日間に生じたことを思い出さされ、まず塾を開いた部屋の障子の継ぎはぎを話題にしています。

 この2間続きの部屋には障子が沢山ありますが、そのうちの3枚に、計4か所の穴が開いていました。それらが、きれいに補修され、その補修が新雪のように感じられたからです。北国から通う人形教室の生徒さんが過日逗留され、直してくださっていたのです。ここで義妹は、哲範さんさんの料理を主に法事の会食をしていますが、そうと知って直してくださったのでしょう。

 ボツボツ貼り直そうと思っていた矢先の障子ですから黄ばんでいます。それだけに新雪のように感じられたわけですが、当分「貼り直しは延期だナ」とも感じさせられています。貧乏性の私は、モノを大切にしていた時代を、農業文化が支配していた半世紀以前のわが国を思い出し、なぜかほのぼのとさせられています。

 この女性の補修を話題にしたわけは、塾の紅一点・鈴江朋子さんが取り出した新聞の切り抜きがキッカケです。女性の時代になりそうだ、と思わせられた記事でした。鈴江さんは、311の後の入塾者ですが、この記事の市民発電所(市民が出資しあった太陽光発電所)は彼女の発案が実ったものです。塾で学んだことに刺激され、発案し、即座に動き始めています。

 塾では『次の生き方』を検証していましたが、SMAD(米・加州の州都、サクラメント市の市民が設立した発電所)にも触れています。SMADは、事故発生を契機に、償却できていない原子力発電所(ランチョセコ発電所)を住民投票で閉鎖・解体処分を決めたことでも有名です。市民が市民自身のために設立した発電所ですから、市民のために廃棄したわけです。

 鈴江さんが市民発電所を夢見て発案したことは聞いていましたが、とっくの昔に挫折した、と感じていました。それだけに驚かされたり、感心させられたりしたわけです。

 「そういえば」と、前日の岐阜県からの来訪者を思い出しました。3人の女性が、それぞれの家族を巻き込んで「エコライフガーデン造り」に取り組んだ結果報告のことです。そのお一人とは、次のような語らいもありました。ご主人が「木工オモチャ」創りに手を出され、「道具を次々と欲しがって困ります」とおっしゃったことです。

 「道具はその人の延長のようなものです」「私なら何としても買わせてほしい」

 こうした会話をしながら、その人はスマホをいじくっていましたが、指し示された画面には、ご主人作の、北欧で観た木工オモチャのような優れものが映し出られていました。

 他にも、ご主人をまきこんで、郊外に住処を設け、移り住んだ人もいます。男性対象の勉強会ではこのような事例を聴いたことがありません。アパレル時代には、社長室長の立場を活かし、新居計画の相談に来たすべての男子社員に勧めたことがありますが、誰一人としてし実行に移してはいません。

 「そういえば」と、また思い出したことがあります。ことの大小は別ですが「実践の大切さ」という意味では同じく尊い出来事でした。それは「端切れを買って作りました」と言って、妻が人形教室の生徒さんから頂いた世界で唯一のエプロンでした。妻はその方に、当週記に載せる許可を得たそうですが、返事は「生地代は、250円」であったようです。

 この日、塾では「作り手」と「使い手」の顔が見える関係の尊さも話題にしていましたから、こうした一連のことを思い出したのだと思います。

 もちろん、網田さんに手掛けてもらっている「竹の入り口」や、舞鶴さんに造ってもらった毛糸の帽子、あるいは舞鶴さんが手掛け始めた農業を思い出し、溜飲を下げています。しかし、先週末に迎えた佛教大学の学生数(女子7人、男子4人)も思い出し、改めて女性の時代になりそうだ、と感じさせられています。そこに、元留学中国女性からのメールでした。

 下の子の世話のために休職中ですが、世話をしながらできることとして、博士課程後期を受講することにしました、とのお知らせでした。

 ちなみに、この女性(当時独身)とは中国の雲南省で出会っています。少数民族村の踏査地で出会ったものですが、彼女は同じく大学院生(既婚女性)と2人で行動していました。その日本人院生を、私はこっぴどく叱ったことがあります。それは、現実を知って心変わりしたことを叱ったものです。少数民族の家庭に宿泊することにしたのですが、電器もなければ風呂もないそのたたずまいを見て尻込みしたからです。

 それがキッカケ(日中のお二人の推挙のおかげ)で私は院生相手の講義を受け持つ機会を与えられています。なお、この日本人院生はその後、博士号を取得しており、この春から大学院で教鞭をとる立場になっています。

 それはともかく、時代の転換期では、理想の大小は別にして、その現実化に立ち向かおうとする勇気や熱意が不可欠ですが、男性より女性の方が優れているのかもしれません。
 

補修が新雪のように感じられた

世界で唯一のエプロン

鈴江朋子さんが取り出した新聞の切り抜き