明範クンの観察。 越境したハッピーへの教育。そして明範クンに説き教え。
 

 そして明範クンに説き教え。 明範クンはとても素直で、登校前に金魚の餌やりをし、きちんと挨拶をして出かけます。下校時は挨拶がありませんが、金魚に餌をやり、畑の水やりもしますし、金太の散歩にも当たっています。

 とはいえ、私の目から見たら、それは、形から入るタイプであるように見受けられ、気の毒に見えます。相当の文明病にかかっているように思われるのです。10歳と言えば「花子とアン」で言えば、あるいはかつての「おしん」でいえば、家族のために紡績工場などに買われてゆく娘の年頃でした。それは、形はめちゃくちゃですが、形の根本である「方」、つまり生き方や考え方には1本の筋が通っており(形の上では)家族はバラバラになっていても心は1つで、お互いに立場を超えて家族を思い合っています。

 私は10歳のころは、(6歳から飼い始めた)鶏を絞めて、解体まで担当していました。薪風呂焚きを受け持ち、誰よりの少ない燃料で沸かしていました。要は、家族の一員として早く小さな大人になり、欠くべかざる存在になりたい、と強く願っていました。

 そうした心遣いや努力を「しなくてもよい」「望まなくてもよい」というのが「文明だ」と気付かされた私は、文明に疑問を抱いています。その疑問が拭いきれなくなった時に、サラリーマンを辞めています。そして、次代の創出を夢見ています。ですからまず、夢見ている未来像を文字に書き留めながら、その夢の現実化に専心し始めています。

 余談ですが、その文章を、アイトワ塾では今や、検証するようなことをしています。間違いがあれば、直ちに軌道修正するためです。

 文字に書き残す過程で」「品」についても考えました。次代は、「品」の定義も左右するモノサシ(価値観や美意識)自体を代えてしまうに違いない、と見てとったからです。

 この木曜日に、たまたま明範クンと一緒に「越境したハッピー」を目撃しました。放っておけば、ハッピーは金太の側に近づいて行き、金太に挑みかかります。まるでいじめっ子です。その餌を奪い、2匹分を食べて、便を緩めたこともあります。

 そこで、明範クンに常備の「躾竹」でハッピーを打たせ、ハッピーを(ハッピーに与えている)自由権内に戻させようとしましたが、明範クンは首を「横に振り」尻込みしました。ハッピーを打てなかったのです。そこで第1次の説教です。

 「明範クンは、(学校で)先生がいじめっ子を制裁してくれなくても平気ですか」と、問いかけました。私ならこっぴどく叱ります。もちろん体罰も加えるでしょう。その体罰まで「とやかくいう父兄など」がいたら、「お好きなように」と言って、さっさと私なら辞めます。その覚悟を決めてかからないと、己までが文明に毒されてしまいかねません。

 幸いなことに、私はなんとか女子学生にも「クビ」を宣告されずに済みました。もちろん、それだけに(願ったようには行きませんでしたが)「全体の調和」には気を使っていました。弱い者いじめ、卑怯や卑劣、嘘つき、あるいは不正直、いわんや進取性の欠如などを組織内からなくしたい、と願ってきました。強いて言えば、私にできたことは「自然の摂理にのっとったやり方」でこれだけのことをしてきただけですが、何とか幸せに過ごせました。幸せに過ごせたということは、企業では増収増益を、学校なら全学科定員超に、仲間にしてもらえたということです。

 こうした考え方が構築した文化圏に、この家族は飛び込んでくれたのです。

 そこで、今回は、明範クンに越してきた時に説教したことから説き直しました。「私は5歳でここに来ました。明範クンは10歳です。この5年間の差はとても大きい。それを乗り越えないと」いけませんよ、と説き教えてあったことをまず思い出させたのです。そのうえで、

 「私は5歳だったから『ズルイコト』をあまり知らなかった。だけどキミは知っています。そのズルサに負けたら、たとえば『楽をしたい』とか、『尻込み』なんてことをしたら、キミはここでは住めない人になります。ここでキミが棲めなくなったら、お父さんやお母さんはとてもつらい」ことでしょう、といった補足説明をしたわけです。

 これだけはキチンとしておかないと、お互いにとても失礼なことをしでかしかねないのです。

 実は、なんとしてもこの文化圏で踏み込んでもらい、なんとしても幸せな余生を送ってほしい、と願った老人がいましたが、遠慮されてしまったことがあります。

 幾カ月にもわたって庭仕事に通い、ここに馴染もうと努めてくれたとても力強くて繊細な女性もありました。しかし、この女性は独身女性で、文化の何たるかを十分にわきまえておらず、説き教える時間不足に不安を覚えた私は、つれなく諦めてもらったこともあります。

 橋本宙八一家にも住み込んでもらい、カフェテラスを2人のお嬢さんに継承してもらいたく願っています。しかし、この姉妹は逆に、文化の何たるかを十二分に承知しており、多分それが原因で躊躇されてしまった(マクロビアンとアイトワの、互いの文化の微妙な差異に気付かれたようで?!?)という事情もあります。