無事であった旨
 

 

 イノシシが出入りしたところを探す作業なら、むしろ明範クンが最適任者です。単純明快な作業だし、(加齢とともに)動物的感覚(は既成概念によって毒されがちです)が5人の中では最も鋭敏であるはずです。

 そこで、明範クンにこの役割を受け持たせようとしたのですが、当日はその時間がない様子を示し、受け持ってくれませんでした。そこで私は(イノシシを再侵入させ、私たちがさらなる被害を背負ってしまう)覚悟をしました。その被害に明範クン戦慄し、自衛する自覚を促そうとしたのです。その自覚が出来ないほど「ボケてはいない」ことを期待したのです。

 余談ですが、太平洋戦争などでは、この若者の自衛する自覚につけ込んで、少年兵を刈り出し、危険な任務につかせてきたのではないでしょうか。

 ところが、イノシシは再侵入しませんでした。

 翌日、明範クンの下校時間までに、哲範さんに(イノシシ除けネットを張り巡らせた)垣根沿いの草刈りを頼みました。明範クンが点検しやすくするためです。その過程で、哲範さんは、イノシシが出入りしたところを発見したのです。

 そこで、その補修を明範クンに見学させた上で、他に出入りしたところがないか探させました。どこまで真剣に点検したか否かはわかりませんが、再侵入されたら意識を変えるでしょう。その意識が健全にならないと見てとったら、私はさじを投げます。