歓待する段取り

 

 来客は玄匠先生と瞳さんでした。妻は、雨さえ降らなければ、「今一番見晴らしがよい屋外で」と思いついたわけです。この思い付きを私は高く評価しました。問題は、その評価の想いが妻には願った通りに伝わっていなかったことです。

 もちろん妻は、脚が不自由な玄匠先生に配慮していました。また、空模様が本当に悪くて、雨が降りそうなら「屋内で」、と二股をかけていました。ですから昼食は、いずれに転んでもいいように、と松花堂弁当を計画していました。これも高く評価しました。

 問題は、翌朝の予期せぬ好天でした。妻も驚いていました。「玄匠先生!(屋外では)お暑くないかなア」と私に問いかけたのです。私にすれば意外な発言でした。当然、私は好天も計算に入れており、たとえばテーブルセットを「少し木陰に移動させてください」とか、「まず、冷たいものからお出ししましょう」などの発言があるもの、と期待していました。

 「お暑くないかなア」とは何事か、と思いました。ですから、「君のアイデアだろう」と応えたのです。暑そうになると思うのなら「どうすればよいのだ。好天の場合の指示を出せ」という意味で、「君のアイデアだろう」と応えたのですが、これがイケナカッタようです。

 私の考え方でいえば、任されたら、あるいは引き受けたのなら、途中でぐらつきたくないし、ぐらつかされたくない。あるいは、思いが及んでいなことに直面したら、急いで軌道修正し、次善策を打ち出し、良き結果に結び付けたい。自信がない場合は、私が「全責任をとる」ことを 明言した上で、指示に厳密に従うように願い出ます。ところが妻は、プリプリ膨れはじめたのです。


 


玄匠先生と瞳さん

松花堂弁当を計画