彬さんがこしらえた「横穴」の底にコンクリートを張る。「一服場」として活かせそうなところを整備する。西の水路の落ち枝を拾い集め、この1カ月間に出た剪定クズと共に燃やし、大量の「灰作り」に取り組む。この3つが当初の課題でした。来訪予定者が1人、事故で来ることができなくなり、「太い青竹の切り取り」を予定から外し、3つにしたのです。
この日(男子3人、女子2人が訪れた日)は、時間帯がブラジルでのサッカーで日本チームが出場する時間に当たっていました。ですから、「君たちは、サッカーを観るという選択をせずに、ここに居る。そう選択した自分の意識を尊び、その意義を噛みしめてもらいたい」と言ったような出迎えの言葉をまず送り、その上でこの日に用いる道具を見てもらい、さらに庭を巡りながら仕事場に案内しており、まずこの日のありようを想像してもらっています。
「横穴」の底にコンクリートを張る作業には、5つの付随する作業が伴っています。底の土を削り取り、しかるべきところで活かす。砂を一輪車で運んで来て、セメントを練り、そして塗り込める、というそれぞれ内容や道具が異なる作業のことです。
「一服場」(として活かせそうな所)を整備する作業とは、薪小屋の一角を「屋根付きの床几」にするがごとき作業です。ここは東西方向に吹き抜けで(蒸し竈などの収納場所になっていま)すから、その東面の外側を整備して足踏み場を作り、多目的に用いられるようにする作業です。特に、高齢者に庭めぐりをしてもらうおりに(途中で)一服してもらったり、私たちがもっと老けたら、庭仕事の途中で一服したり、来訪者と景色を眺めたりする上でも便利です。
この作業は、竹の根がはびこった固い土を掘り起こすわけですから重労働です。また、「横穴」から出た土を運んでもらって敷いて、ならしてもらう作業も伴っていました。
大量の「灰作り」は、水路で落ち枝を拾い、囲炉裏場まで運ぶ作業と、その落ち枝と剪定クズを適度に混ぜて燃やし、灰にするわけですが、最後の1時間は焼きイモ作りに生かします。
この3つの作業を、(もちろんお互いの作業を途中で交換し、さまざまな経験を積むように助言した上で)5人に自由に選んでもらいました。結果、なんと「一服場」作りを2人の女子学生が選んでおり、ブチ切りとスコップを持って仕事場に立っていました。
私はブチキリの使い勝手を説明しました。かつて母は、もっと重たいブチ切りを用いていました。母は非力であるが故に(振り下ろす力が足らず、振りかざして下ろす力さえあれば)重たい農具(が落ちる時に生じさせる衝撃力)を当てにせざるを得なかったわけです。
しばらくするとこの2人は、リーダーを伴って私の元に来ました。その相談は「そばに生えている(根元を1mほど残して頭部を切り取った)3本のタケを」どうするか、「邪魔だけど」との相談でした。私は前もってこの3本を取り除き易いか否かを調べており、ビクともしませんでしたから、さらに朽ちるまで待つことにして、この度は手を付けないことにしていました。
しかし、「もちろん邪魔だし、いずれは取り去る」。もしこれを取り去るとすれば「取り去りたければ「力持ちのリーダーに頼まないとだめだ」と応え、あきらめるように勧めました。なんと30分もしない内に、リーダーは3本とも根から掘り出してしており、「横穴」の仕事に戻っていました。
狭い横穴に半身を突っ込んで土をかき取る仕事は、2人が交代で当たらざるをえない作業であり、リーダーは手持ちぶさたであったのでしょう。そこで、1人は砂運びに当たってもらい、セメントを練る作業を並行して行ってもらうことにしました。
この3つの作業(3本のタケの根株とりも含め)は2時過ぎにはほぼ仕上がってしまいました。また、もう1つの理由もあって(それは前もってリーダーから聞いていました)オヤツの時間をいつもより1時間半速めています。女子学生の1人が中座する必要があったのです。
この度のリーダーは、中座や途中参加を認めておらず、アルバイトの関係で参加できない学生が出ていた、と聴かされました。「それはもったいない」と私は思いますから、中座や途中参加にゴーサインを出しています。こうした作業にいそしもうとする若者には、近い将来のために、1人でも多くに体験させてあげたいのです。
オヤツの後、4人になった学生に、焚火にとりかかるだけでなく、新たに「太い(背丈15m近い)青竹の切り取り作業」を付け加え、手分けして当たってもらいました。後者は思っていたよりはるかに力を要する作業であったことが、すぐに分かりました。
西の水路から枯れ枝を集める作業に当たってきた学生は、焚火は女子学生が1人で出来る「軽い仕事と見た」のでしょうか、「僕の仕事がありません」と言って催促しました。
そこで、5つ目のキツイ仕事があることを教えています。それは、横穴の前の、雨の日には水路になる道の土を、10cm弱削り取り、「一服場」に運び込む作業です。この学生は、この作業にすぐさま取り組み、あまりにも多くの土を箕に積み過ぎっために、プラスチックの丈夫な箕を割いています。
かくして、イモを燠(おき)に突っ込む頃には、全員が疲労困憊。それでなくとも余計な口を利かない人たちですが、かつてないほど寡黙になっていました。
そのような次第で、火曜日に、彼らの仕事の後を引き継いで、いつでも学生たちに、彼らが取組んだ作業の成果を完成形にして、見てもらえるようにしておきたいと考えています。つまり、「横穴」の前の(雨の日は水路になる)道(から横穴に雨水が入らないようにする)作業と、「一服場」を完成させる作業です。さらに、無煙炭化器に溜まった(上部の乾いた)灰も、浜田さんから買い求めた新兵器を試用してふるいとり、2袋に、詰めています。
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