誤解
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晴ちゃんと私は、ワナを点検する翌日の時刻を決めました。晴ちゃんの望みは「5時に」でしたが、私は「4時までに来てほしい」と頼みました。篠田先生(来客)の到着時間(5時半)までに点検作業を済ませておきたかったのです。 夕刻、晴ちゃんの母親・葉子さんから電話があり、妻が出ました。私は(内線子機を持たずに)庭に出ていたのです。葉子さんは「晴太が4時に起こしてほしい」と言っていますが、「そんなに早くお邪魔しても」よいのか、と妻に確かめたかったのでしょう。 具合が悪いことに、庭にいた私は、居間にある電話口まで走るには遠すぎました。しかし、大声で叫べば十分会話ができる距離でした。そこで私は、まず午前5時を「午後の5時」と勘違いしていたことを詫びるように頼み、次いで、午前であれば5時以降なら「何時でも大丈夫」「6時で、どうだ」「6時半でも、いいよ」と叫びました。 多分妻は、晴ちゃんを歓迎している気持ちを伝えたいがあまりに、「6時に」とか「6時半に」といった約束時刻の特定に力を入れなかったのでしょう。葉子さんは葉子さんで、早朝から迷惑を懸けそう、との遠慮の気持ちを抱いていたのではないでしょうか。 私は4時に目覚め、パソコンで時間をつないで5時半になるのを待ち、庭に出ています。そして、軽い庭仕事をしながら6時半まで待ち構えました。両家間の距離は2kmほどですが、その間に信号が3つほどあります。ちょっと心配になった私は妻に電話を入れさせました。 なんと晴ちゃんは日が出る前に起こしてもらい、自転車で4時にわが家に駆けつけており、1人で点検を終えていたわけです。きっと、庭は朝露で濡れていたことでしょう。夜露の重みで庭の木々の小枝はたれさがっており、小路には濡れた草が垂れ込めていたことでしょう。 この一件は、晴ちゃんの父親・明さんの電話に妻が出て、伝言を私に託したことから始まっており、結果はハッピーエンドに終わりました。しかし、いらぬ気を葉子さんに使わせたのではないか、と少し心残りです。 |