考えてもいなかった発想
 

 「ドイツ人は凄いナ」と、佐伯さん(日本ジーンズ協議会専務理事・佐伯晃)がポツリと語った。その時に、「その通り」と思った。しかしその続きにキョトンとさせられた。「ヒトラーの夢をメルケルが実現させたのだから」と、つながったからだ。

 ヒトラーの「欧州の帝王」になろうとの野望を、メルケルはその夢をこともなく実現させたのだ、と私は聞いたように感じたからだ。でもすぐに、それは私の卑しさがそう解釈させたもので、佐伯さんの人柄をもってすれば「違うはず」と思い直している。

 つまり、ヒトラーは軍事力で無理やり「欧州の帝王」の座を手に入れようとした。しかし、メルケルは環境施策などをもって、はからずしてその座といってよさそうな立場に就かざるをえなくなったわけだ、と言いたかったのだろう。

 このように思い返しながら、しばし彼我の差に想いを馳せた。

 私たち日本人は「来年のことを言えば鬼が笑う」とか、「やってみないと、分からない」とよく言うが、ドイツ人にはこの考え方に共感しにくいことだろう。だからドイツ人の多くは、間違った方向に狂奔させたヒトラーが許せないのだ、と聞かされている。

 そこがドイツ人は凄いところだ、と多くの人が言う。過去の禍根を公表・公開し、反省する。それが他の多くの観る人々に、ドイツ人だけの問題ではなく「人間を狂わせる戦争の問題ダ」と感じさせる。そして、ドイツ人に対する信頼感を深めさせている。

 近年のドイツでは、異国人を大戦中に強制労働に刈り出したことを精査し、償いの徹底を図り出している。と聞かされている。もちろん当時の加害者が揃って現存し散るわけではない。、

 こんなことを考えているときに、次の話題が飛び出した。

 かなり酩酊していので記憶は定かではないが、大好きだった越後さん(伊藤忠商事の社長だった当時、講演の原稿作りの関係でよく対で話をさせてもらった)の名前が木田さんの口から飛び出した。NPO・日本ファイバーリサイクル推進協議会の理事長で、リクチュールプロジェクトの立案・推進者だ。

 「瀬島龍三を伊藤忠に採ってもらってよかった」と切り出した。越後正一時代の伊藤忠でのことだ。そして、次のようにつないだ。「もし三菱が採っていたら、日本はどうなっていたことか」と。三菱と言えば、第1次大戦で儲け、その夢よ「もう一度」とばかりに第2次大戦にも勇んで関わり積極的に画策した、と聞かされている。

 その負の遺産は

 そう言われてみれば、ドイツではその後、第2次大戦に深くかかわった企業はどうなっているのか。存続しているとすれば、企業理念はそのままか、変えたとすればどのように変えたのか、とても気になり始めました。20年前なら、即座に飛び出していたことでしょう。