挨拶が暗くなっており

 

 キャンパスはきれいなままで、胸がいっぱいになった。副学長に出迎えられ、黙々と理事長室を目指した。

 この女子短大には言葉に表しようがない思い入れが私にはある。21年前に誘われたが、引き受けることは「重い荷」を背負い込むこと、との覚悟を要した。そこで断りに行ったにもかかわらず、引き受ける返事をして、帰路に着いた。そして10年もの間、それまでの努め方とは異なる想い覚悟を決めて取り組んだのだから。

 無手勝流で取り組んだ。教育界の実体などまったく知らなかったし、教育者としての自信などまったくなかったのだから当然だ。しかし、なぜか意義に燃えた(拙著『次の生き方』平凡社、の「あとがき」に詳述)。要は、人はそう簡単には変れないと思う。なんとかして自分の「良いところ」を出そう、と努めるしかないと思う。

 そこで、やみくもに禁止事項を増やさず、学生の創造性を信じ、5つの特色を強調して改革に取組んだ。

 特色の1つは、「目的の共有」。

 2つ目は、心を1つにして「環境問題」に誠実に取り組む。

 3つ目は「3つの約束 の励行。

 4つ目は「心の大人」を目指す。

 そして5つ目は「小さな巨人」になること、だった。

 14001取得は岐阜県では初、禁煙は全国初であったと思う。幸いにも、3部(昼間2交代制の)体質の学校(しかも定員割れ)が、1部の学校に生まれ変わり、しかも全入を認めぬ方針のもとに全学科定員オーバーになっていた。そこで、後ろ髪を引かれる思いがしたが、ケリを付けた。

 このたび、2人の要人のおかげで(上の想いを噛みしめ直すためにも)出かけることができた。残念ながら、とりわけ「環境問題」に真摯な態度や、「小さな巨人」を目指す方向を転換しており、心を1つにする風土や、全入を許さぬ方針は引き継がれていない、と睨んだ。いわんや、「出口責任」を果たそうとする機運はうさん霧消、と見てとった。

 講義室なども副学長に少し案内してもらった。様子は変わっており、きれいになっていた。ただし、キャンパスはやけに静かだった。このままでは、定員割れは恒常化しかねない、と心配した。


 


キャンパスはきれいなままで、胸がいっぱいになった

キャンパスはきれいなままで、胸がいっぱいになった

様子は変わっており、きれいになっていた

集水器