PCに取り組んでいたときだ。屋根に何かがいる、と感じた。空耳かもしれない、と思って暫く放っていた。それがイケナカッタ。
もしやと思い、居間に出て、窓先を見て、ギョッとした。サルの手が見えた。ガラス戸を開け、屋根を見上げた時に、サルと真近かに目が合った。屋根からもう一度手を伸ばそうとしており、干し柿がゆれていた。落ち着いて見直すと、すでに半分以上が食いとられていた。干した大根の葉はほとんどなくなっており、屋根に取り上げたのか、屋根からのぞいていたわけだ。
軒先に、干し柿を吊るし始めて数十年になる。これが襲われたのは初めてだ。どのようにしてここまで盗ることができたのか、いまだに解らない。それほど飢えているのだろうナ、と思いもしたが、その執念にはゾッとさせられた。何故か、明日のわが身ではないか、とフト思った。
こうなると、干し柿を吊るすところが思い当たらない。サルの手から逃れても、カラスに狙われかねない。さてどうするか、と考えながらその日は眠った。異なるストレスだ。
翌朝だった。学生を迎えるための下準備をしていて、畑の被害に気が付いた。惨憺たる光景だった。ブロッコリーはよほどオイシイのだろう。原形をとどめないほどひしゃげていた。家族連れで寄ってたかって饗宴を開いたかのようなに思われた。
ダイコンの畝もやられていた。次々と抜いて、半ばカジッて放り出してあった。コウシンダイコンもやられていた。赤い部分がオイシイのか、白い皮の部分は残して食べていた。カブラの畝も、ハクサイも襲われていた。集団で、腰を据えて襲われたら、モミガラのマフラーなど役に立たない。
その後、学生を見送った後で、キャベツなどの被害も知った。4つ残っていたキャバツの内、3つがヤラレタ。残る1つは、少し痛みかけていたが、「良いところ取りをして、お好み焼きでも作ろう」と、妻に頼んだ。さらに、ネギも、レースのカーテン地をめくって、葉をちぎっていたことを知った。さて、どうするか。
害に遭った根菜の幾つかを集めてみて、悔しい思いを噛みしめ直した。
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