脳の硬化を自覚

 

 「100万円あったら何したい?」と問うた結果の記事だった。回答は「国内旅行」が1位。その後に「海外旅行」「預貯金」「家電製品の購入」「ホテルや旅館に宿泊」「外食」などと続き(3位の「預貯金」を除き)10位の(日に1万円ずつ100日をリッチに、などと)「生活費に充てる」にいたるもので、消費願望が続いた。

 私は思案を重ねたが「欲しいもの」が見当たらず、「答えが見つからない」と、応えた。それは嬉しい悲鳴だ、と思いながら「100万円なら私にも、明日にでも用意出来る」「それは、差し迫って欲しいものなどないから使わずに残っているわけだ」と、理屈をこねた。

 その時に「そうね」と、妻も同調したが、すぐに「1億円あったら」と大きく出た。金額が100倍になったが、この時も「答えが見つからない」と、応えた。

 その続きを、エネカンへの車中で蒸し返したわけだ。ひとしきり私の話を聞いた後、舞鶴さんが「私にはある」と、と膝を乗り出す。「工作機などを揃えた工作室だ」という。「それなら私も欲しい。旋盤器なども揃えた部屋だ」と、目を輝かせた。

 かねがね私は「欲望の解放」がむなしく思われ、「人間の解放」を、などとのたまって来た。その肝心を忘れ去っており、舞鶴さんにお株を奪われたような気分。「モノではなくて、モノを創り出すモンが大事では」との回答だった。