予期せぬ来客が4組も

 

 最初の予期せぬ来客は、初めてのトルコ旅行で知り合った友人だった。3人の同期生を伴っての来店で、後藤さんに「ちょっとだけ待って」「その間にこのスキャンを」と頼んで中座。なんと同期生の一人は「ブルックスブラザーズ」に関わりのある人だった。

 思い出をひとしきり語った。「世界で最初の既製服会社」「1818年創業」なぜアメリカントラッド(のスーツ)は腰を絞らずにわたる思い出が次々と飛び出し、しばし後藤さんを失念。

 「アメリカのちょっとした父親は」、「自分が(その親父に)連れてきてもらったように息子を連れて来て」、息子を「ここのファンにしたものですよ」と。

 その人は「記念に」と、持参の手提げ袋を空にして、置いて帰ってもらえた

 3組目の予期せぬ来客は、「石川さんッテ、孝之さんご存知」「カンザスの石川さん」と妻から以前、「よく知ってる」と応じた。アメリカのカンザスシティからの旅行者夫妻だった。奥さんは「大の人形好き」。「ならばアイトワに、と石川さんに教わった」といって来店。

 ここまで来て「お向かいに呼び止められ、立ち寄りました」。「京都が大好き」との、30年来カンザスで事業を経営しているおしどりご夫婦。今は「旅行案内に載っていない素敵なところ」を捜し歩くまでの「京都観光の常連」とのこと。確かな人の紹介を大切にする意識を養ってもらいたいとの想いで、「知る人ぞ知る」所を紹介した。人形展示室でしばし歓談。

 私のカンザスでの思い出は、26年前から始まり、ブッシュ大統領誕生前年の15年前まで数度にわたる。ご夫婦を見送った後、1990年の拙著『人と地球に優しい企業』を取り出し、石川さんに教わったエピソードを読み直した。

 最後の予期せぬ来客は、ちあきさんだった。スペイン旅行以来と言ってもよいほどの久しぶりで、嬉しかった。会えなかった訳も知った。10人ばかりのオース トラリアからの観光客、マクロビアン仲間の京都案内だった。

 このところ一帯は観光客ブームだが、新たなアイトワへの来店客は激減している。それだけに、こうして訪ねてもらえる人との触れ合いはなんともありがたい。問題は、目の前で繰り広げられる観光客の待ち伏せ行為を、アイトワが放置しているかのごとくに責められ始めたことだ。さらに、アイトワが始めたのではとの憶測までする人が表れており、妻にはとても辛そうだ。
 


持参の手提げ袋を空にして、置いて帰ってもらえた