糸を手繰り始めた

 

 「余禄」は次のごとく、同胞であるはずの沖縄の人たちを、「憎みながら信じる」ことさえできなくしている恐れを訴えている。

 安倍首相は沖縄政策を、いったい何処を見て進めているのか。安倍首相はしばしば、わが国の今の繁栄は、太平洋戦争における尊い犠牲がなければあり得なかったかのようなは発言を繰り返してきた。そして靖国神社を尊んできた。

 沖縄県民の戦いぶりや、沖縄の扱われ方はさまざまな記録が今に伝えている。28年前の「天声人語」は簡にして明だ。

 「沖縄県民斯く戦えり」の前には次のような言葉があった。

 「沖縄県民の実情に関していえば、県知事より報告せられるべきも、県には既に通信能力なく、三二軍もまた通信の余力なしと認められるにつき、本職、県知事の依頼を受けたるにあらざれども、現状を看過するに忍びず、これに代わって緊急通知申し上ぐ」

 日本軍は県民のことを顧みていない。女装して夜襲をかけ、女性の犠牲を増やす原因を作った。機密を漏らされはしまいかと、捕虜になる事を許さず、自決を迫った。豪から追い出したり、 泣く赤子を母親に殺させたりした。にもかかわらず県民は献身的に軍に協力した。

 こうした実情を鑑み、電報は「沖縄県民斯く戦えり」の次に、「県民に対して後世、特別のご高配を賜らんことを」と結んでいる。