歯の治療

 

 奥歯で咬む食事ができた上に、妻に説教をされながらとはいえ脚を揉んでもらい、その上に筋肉の炎症を和らげるゲル状の薬を塗り込んでもらって眠った。10時過ぎには眠りこけたはずだ。翌朝、目覚めたのは6時過ぎで、優に8時間は眠っていたことになる。だがすぐには起き出さず、なぜかこのたび歯科医で体験したことを振り返っていた。そして大いなる反省した。

 過日、この歯科医で予約の時刻をはるかに超えて待たされたことがあるが、その折のことだ。確か、10名ほどの人を招き、パーティの準備をしていた途中かなんかであったと思う。妻と一緒に訪れ、イライラさせられた。「あれもできた」「これも片づけられていたはずだ」などと妻に愚痴を言って、イライラした。その折の吾が態度の反省だった。

 前夜まで、実質上でいえば、有効な奥歯は第6歯が1本しかない口で食事をしていた。第8歯まで上下揃ってあったころと比べると、噛み合わせ能力は6分の1になっていた計算だ。この度の治療で、反対側に、第5歯から第7歯に至るブリッジを入ることになっており、これまでの6分の1が、2分の1にまで回復させられることになる。

 実はその上に、前回の治療日以降に問題が1つ生じていた。それは、門歯の一部が欠けていたことだ。だが、この新たな問題を、事前に歯科医に知らせずに訪れている。おおげさにしたくもなかったし、治療が始まってから申告した方が合理的であろう、と考えていた。つまり、欠陥の状況を確かめてもらった方が、治療に要する時間が読みやすく、次回の予約をし易いに違いない、、と思っていたわけだ。

 だが、ついでに「これも、直しましょう」と言ってもらえた。そして加療に10分ほど余分に費やさせてしまった。しかもその後で、いつもの歯の最後の点検があり、違和感を抱き始めていた歯を「虫歯になりかけている」と見抜いてもらえた。

 私にすれば、違和感程度で騒ぐのは時期尚早。大げさだ、と思われた。だが、その一方で、この歯は、この日ブリッジをかける歯に相対する歯であり、これを失うと噛み合わせを失うことになり、この日の治療が無意味になってしまう。だから、もしも虫歯になりかけているのなら「早いうちに」との気分にもされていた。

 それだけに「次回、治療しましょう」と見抜いてもらえたことがとてもありがたく感じられ、とても嬉しい気分で次の予約日を設定した。

 問題はその後だった。この日の私は、ズルズルッと加療時間を10分ほど延長させてしまっていたことだ。それがとても気になった。さて、どちらを選択するか、とまで考えさせられてしまった。この歯科医は、こうしたいわば小さな親切を積み重ねてしまい、過日の私は、予約時間に駆けつけながら小1時間も待たされてしまったのだろう、との憶測であった。

 この選択に結論を出さぬまま、日を過ごしていたが、この日、寝床で反省させられたわけだ。