改装
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金太のアイデンティティを尊重し、小屋を元の位置に戻したが、次第に冷え込みが襲い始めた。心配になった。「金太は、人間の歳にすれば、100歳に近いのではないか」 そこで、この日は寝床の中で改装プランを思い立ち、それを実行に移すことにした。 その計画を妻に知らせると、妻は即座に母屋に走り、引き返してきた。その手には小さなホットカ―ペットがあった。恐らく妻が、母の座蒲団の下に敷かせたくて買い求めた品だろう。残念ながら、金太のハウスには少し大き過ぎた。少し無理をすれば使えたが、いやむしろ両サイドの淵が少しゆがんで高くなり、具合がよいかもしれないが、「ちょっと大き過ぎる」と私は言ってしまっていた。だから、「ヤッパリ、造ってやる」と宣言した。 妻は「それは大変だろう」と思ったようで、「既製品があるのではない」か、言いだした。そこで、最寄りのHCに電話をさせ、確かめさせた。幸か不幸か、猫用の製品(猫が中で丸くなれるようにしたボウル型の製品)はあるが、犬用は置いていない、とのこと。どこかで探せばあるのではないか、との意見もあったが、追及を打ち切らせ「ヤッパリ造ってやる」にした。 まず、ケンに用いた「元は母が使っていたアンカ」を探させたが、残してはいなかった。もちろん、妻のことだから、どこかから出てくるかもしれないが、あきらめさせた。父が使っていた分は、私が現在用いている。そこで、母が客用に用意していた分の1つを取り出させた。 「これを、どこに、いかに装着すべきか」。金太のことだ、暖かくなった昼間だけでなく、夜分にさえ放り出すかもしれない。第一に、ゴロゴロした寝床では不愉快だろう。思案は2転3転し、ついに「そうだ」になった。小屋の床を点検すると、記憶通りに床は2つに分かれており、取り外せることが分かったからだ。 そこで妻に「床板の奥の方の床下に装着したい」と相談し、そのアイデアを伝えると、「これは蓋を見失って、ありませんから」と言って、プラスチック製品を取り出してきた。「願っていた通りの品で、これで決まり」と思った。だがそれでは不十分、とすぐに分かった。 このままでは、多くの熱が床下を流れる冷気によって奪い去られてしまう。今度は、妻を呼び出さずに自分で倉庫を探し、発泡スチロール容器を見つけ出し、「これで最終形にできる」「後は時間の問題」と得心したが、「そうは問屋が卸さない」ことに気付かされた。 電気をどのようにして引くか。いきなり地下埋設までするのは問題だろう。かといって、空中を飛ばし「醜いのは困るし」「事故を起こすのはもっと困る」。 そこで、電気関係のモロモロの部品などを仕舞った箱を取り出した。次いで、電柱にするパイプも探し出したが、寸法が(背が高い人に配慮するなら)足りない。そこで、母から妻が受け継ぎ、使い古した「衣文かけ」に出番を与えことにした。 なんとサイズがほぼぴったりだった。まるで、「レヴィ―ストラウスの第2の科学」の世界だ、と思った。そして小1時間後に支柱を完成し、「これで決まり」と思った。だから、スイッチを入れ、半時間ほど他の仕事でその場を離れた。 戻ってみると、金太が小屋の中に、気楽なポーズで納まっており、呼べども簡単には出てこなかった。ヤットのことで外に出させ、床に手を当 てると温かかった。だが、それかけでは「終わらないこと」がまたすぐに分かった。 空中を横に張る電線が「ジャマにならないか」。そばにある庭木の手入時などに「脚立などを引っかけないか」との心配だ。かくしてやっと完成した。電線に少しゆとりをもたせ、モミジの枝にぶら下げることにした。ならば脚立などを引っかけても、電線を切る前に「シマッタ」とすぐに気付かされるに違いない。 |
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プラスチック製品を取り出してきた |
発泡スチロール容器を見つけ出し |
なんとサイズがほぼぴったりだった |
小1時間後に支柱が完成 |
気楽なポーズで納まっており |
電線に少しゆとりをもたせ、モミジの枝にぶら下げる |