当週の異常

 

 11日金曜日、前日の夕刻から降り始めた雨が少し残っていた、温かい朝だった。8時半、雨が上がったと見て取り、カメラを取り出し、モミジのジュウタンを撮りに出た。そこで、初体験の異常現象に気付かされた。屋内から持ち出したカメラのレンズが曇り、撮影に異常をきたした。屋外の方が室内より温度が高く、通常とは逆の結露現象が生じたわけだ。

 ここで、「ひょっとしたら」と、思った。ヒラメイタ、といってもよい。だからカフェテラス窓ガラスを確かめると「ヤッパリ」だった。冬に鍋料理をした時とは逆で、屋外側のガラスに結露現象が生じていた。室内より、屋外の方が温度だけでなく湿度も高かったわけだ。

 その後、この日の夕刊で、伊勢では夏日に、東京でもそれに近いなど、各地で観測史上初の高気を記録したことを知った。

 次の異常は、向かいの借家で繰り広げられる客引き商法の日進月歩だ。当週はこの件で大事な寄合があったが、私は大事な先約とバッティングし、参加できなかった。その代わりに、とは言えないが、連日、夜明けとともに始まる客の待ち受け行為に相当時間付き合えた。その入り口のそばにある木の剪定取り掛かっていたからだ。

 公道に踏み出して声をかけなくなったから、客引きをしていない、と思っているようだが、終始客を待ち受けており、道行く人を執拗に勧誘した。客引き以外の何物でもない。

 だが、変ったこともあった。まず、勧誘する最初のキャッチフレーズが変わった。先週までは、200年前の、江戸時代の、あるいは天保時代の「建物をご覧になりませんか」だったが、「平安時代の貴族の気分を体験されませんか」「味わってはいかがですか」になった。

 また、これまでは究極の癒しの空間とか究極の美的空間だったが、ミュージアムです、外国人にはジャパニーズミュージアムと説得するようになった。

 そして、先週までは「オーナーは千利休に傾倒しています」であったが、ついに「オーナーは利休を超えました」になった。

 私は、これには驚いた。金満家の○○をその額で超えました、なら少しも驚かない。だが、芸術的、文化的でもある価値を、しかも歴史的環境の下に培われ、支えられた価値を、ほんの短時日の間に超えたと訴える表現には腰を抜かすほど驚かされた。

 当週、もう1つの異常は、狂い咲きだ。先週から気付いていながらが、この事例の引用が最後になったのは情けないことだが、それはそれほど、異常気象に慣らされてしまったからだろう。

 その代表例は、エゾヤマツツジとロウバイの狂い咲きだ。エゾヤマツツジは紅葉の時期だが、かなりの数の花をつけて狂い咲き、異様な光景を見せている。ロウバイはまだ葉をしっかり残しているが、つけた蕾を膨らませ、すでに多くの花を咲かせ始めている。これはともに初めて観察することだ。
 


エゾヤマツツジ

エゾヤマツツジ

ロウバイ