天皇誕生日を祝しました

 

 「先の戦争のことを十分に知り」と天皇陛下が話し始められた時に、私は思わずテレビ画面に釘付けになった。不謹慎だが、つまり陛下の意図に反することだろうが、いわゆる「戦争法」のことがピンと頭にきたからだ。「マサカ」とは思ったが、強引に安倍首相が推し進めた「戦争法」を連想してしまったわけだ。次いで、陛下は「考えを深めていくことが」とつながれ、私は耳をいっそうそばだてた。

 結局、この1年を振り返られた陛下は、「先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことだと思います」と、82歳の誕生日を迎えた喜びを、国民にかく呼びかけられた。「マサカ」「マサカ」と思いながら、次の言葉を待った。

 「平和であったならば、社会の様々な分野で有意義な人生を送ったであろう人々が命を失ったわけであり、このことを考えると非常に心が痛みます」とつながれた。ここに至り、確実に私は安倍首相の常套句を思い出していた。つまり、安倍首相が折に触れて、「先の戦争の尊い犠牲があったから、今の繁栄がもたらされた」と語り、先の戦争の効能を強引に言い含める論法を繰り返してきたことを思い出していた。

 その論法をもちいるのであれば、「先の戦争によって、それまで強引に広げた領土を日本は失った」という事実も強調すべきだし、それが今の繁栄をもたらせたのではないか、と時代の変わり目こそ強調すべきではないか、と思った。つまり、人間を支配し、使役する時代ではなくも、その持てる潜在能力を自発的に発揮しあいたくなる気概を醸造すべき時代になっていることを気づき合うことが重要ではないか、と考えた。
 
 ぼんやりとそんなことを考えながら、陛下の健康を祝した。