多様な庭仕事

 

 当週は、摂氏11度まで下がった室温に、「やっと本格的な冬が到来」との思いと、翌日の「サルが出没」の報の2つで始まったような印象が後に残りそうだ。このサル出没の報は、火曜日の散歩に出た妻が亀山公園からケイタイで知らせて来たもので、私は急ぎホタギ伏せ場の扉付けに取り掛かった。

 残るは天井部などにネットをはるだけだが、その最も手軽に張る方式を思いつき、それに要する部品を買い物リストに追加した。週末には後藤さんに大型HCに連れて行ってもらえることになっていたからだ。

 学生を迎える前日、先月の来訪時に学生が(知らずに)掘り出していた1kgのイモで、妻は初めてコンニャク造りに挑戦した。手順は、義妹がネットで調べ、妻はそれに従い、さいの目に切って、ミキサーで撹拌し水と混ぜた上で、炭酸カルシウムを加えよくかき混ぜた上で、成形し、湯で40分湯がくと出来上がり

 水を混ぜる比率、炭酸カルシウムの量、あるいはかき交ぜ方などで多様性を楽しめる

 湯がきあがりの刺身はうまい

 当週は、好天で始まり、朝一番に日向に柚子の皮を出すことが出来る幸運から始まったようなものだが、コンニャク造りに挑戦できたのも幸運だった。つまり、学生が掘り出すときに傷を付けており、それを幸運と私は思ったわけだ。もし傷をつけていなかったら、そのまま埋め戻しており、コンニャク造りに挑戦していなかったところだ。

 ちなみに、わが家では、干しシイタケとかユスの皮の粉末作りなど、乾燥食材作りは、もっぱら屋内暖房用ガス暖房機の余熱を活かして乾燥させるが、少なくとも1度は、好天の日を待って日向で干すようにしている。

 まずこの日は、学生に、「当日は、コンニャクを賞味できる日」であることを説明した。次いで、当日の主要なテーマの説明。それは、庭の改造計画の一環であり、人類が直面する食料問題への備え、と言葉を足した。そのうえで、作業に入ってもらったが、私の場合は77年以上も生きて来たことで知り得たことある。それを、私なりに大事だと思われることを、若い人への助言として随所で挟み込んでいる。この日のその最初は、コンニャクだった。

 学生は、見たことがないはずのコンニャク芋を掘りだしながら、まるで石を掘りだしたかのごとくに扱ったと見た私は、その不注意、つまり観察眼の必要性の指摘だった。


 


ホタギ伏せ場の扉付けに取り掛かった

1kgのイモ

さいの目に切って、ミキサーで撹拌

炭酸カルシウムを加え、よくかき混ぜた

成形し

40分湯がくと出来上がり

水を混ぜる比率、炭酸カルシウムの量、あるいはかき交ぜ方などで多様性を楽しめる

湯がきあがりの刺身はうまい

朝一番に日向に柚子の皮を出すことが出来る幸運
 

  改造計画とは、竹やぶを半分ほど切り拓き、果樹園にしたことから始めた一連のプログラムのことだ。「本日はその一環の作業であり、まずメス木のイチョウを植える」と、語り、その意義と位置づけを説明した。次いで、ブルーベリー畑では、自然生えのムラサキシブを掘り出してもらったが、その狙いは、いずれブルーベリーの苗木を植える予定だ、と語った。

 学生の最初の質問は、自分たちが植え付けたイチョウの苗木の方向について「これでよいのだろうか」だった。「まさに、この通りでよい」と褒めたかったが、代えて「私もこの方向で植えるだろう」と応えた。そして、その理由(太陽光線の方向、既存の枝に翌年演じさせる役目、今年出た芽の将来、新たに芽をふかしそうな位置、期待、そして将来性)を説明した。

 このすでに森のようになっている一角は、苗木を植えても他に悪しき影響は及ぼさない。裏返していえば、植えた苗木は周りの木に負けてしまい、枯らされかねない。逆に、勢いよく大きく育ち、むしろ周りの木を凌駕しながらより役立ってくれる木があればありがたいことだ、とイチョウを選んだ理由を述べた。そして、

 「君たちが私の年頃になれば、この木はそびえたっており、多くのギンナンを毎年のように落としていることだろう」と期待を語り、未来の姿を瞼に描くクセを着けて欲しい、と願った。

 菜園の小路では切り石の敷き直しもしてもらった。中程が沈下していたからだ。結果、学生は見事にかさ上げしていたが、プロセスに問題があった。敷いてあった石をめくり、その下に土を入れ、沈下分をかさ上げする作業だったが、学生はめくり取った敷石を、たとえばクリスマスローズの上などに、立てかけたりしていた。

 時代は次第に、結果よりもプロセスを大事にするようになる、が私の持論だ。その分かり易い事例として学生への助言にした。こうした作業を手伝いに来る、しかも継続的に来る学生には共通転があるように見える。それは「心優しさ」であり「人思い」だ。そうした特色を見事に活かしきる人になってほしい。その願いを形にするための助言を試みた。

 昼食時に、コンニャクの田楽は味わってもらった、妻はそこに、コイモとダイコンの田楽と、稲荷ずしをそえた。コンニャクは2種できたが、多様性を生じさせる理由にも触れた。

 イモ掘りは楽しそうだった。週初めに、防寒手立て(土を被せ、トンネル栽培のようにした)をほどこして置いて、ヨカッタと思った。それが功を奏した、と見た。

 4人の学生は5つのイモ(その2つは丸くてとても大きく、1つは似た形だが小さく、残る2つは小さかった)を無事に掘り出した。それを家庭の事情(祖母が同居など)をかんがみ、各1個ずつを手土産にして、残る1個は焼き芋にして試食した。腐ってはいなかった。翌日のことになるが、学生が掘り残しをしていたことを私は知るところとなっている。

 掘りだしたコイモを越冬させる手はずも、一株ずつ容器に入れさせるなどして、教えた。柑橘類の寒冷紗被せも手伝ってもらえ、完了。クルミの剪定にも手を付け、枝の矯正にめどを立てた。

 この日は、朝から大焚き火を始め、囲炉裏場にあった剪定クズをすべて片づけた。そのたくさんできた燠(おき)でイモを焼いた。焼きあがるまでの間に、中庭の剪定で出たクズを温度計道の脇に積んだままになっていたので、それらを囲炉裏場に運び込んでもらった。これは次回の焼き芋用の燃料に用いる。フィナーレは、恒例の焼きイモの賞味

 


自然生えのムラサキシブを掘り出してもらった

イチョウの苗木

コンニャクの田楽は昼食時に味わってもらった

イモ掘りは楽しそうだった

各1個ずつを手土産にして

一株ずつ容器に入れさせながら

中程が沈下していた

柑橘類の寒冷紗被せ

フィナーレは、恒例の焼きイモの賞味