ガックリ

 

 PCからの指示が効かず、印刷とスキャンが作動しない。この機械は、5年保証をかけているので修繕を、と考えたが、先ずは代替機を買うことにした。

 後藤さんは、前回のプリンター故障時に「純正インクを用いるように注意されていながら」「純正を使ってこなかった」わけだから、「無償では修繕しないだろう」し、「修繕代は買うほどかかりそう」との意見。「ならば、面白いことにできそうダ」と思ったが、まずは兵糧を、と考えて、代替機を買い求めることにした。

 この判断は、「そこまで時間を投じる価値ある問題か」と思うことから始まった。そこまでメーカーに対して「親切」や「深切」心をおこす値打ちがあるのか、と考えたわけだ。

 価値ありとしても、まず兵糧を、と考えた。前回の修繕期間中はコピーやファックスも使えず、多大な不便を蒙った。いわば兵糧を断たれたような、あるいはカタをとられた気分で、ひたすら修繕されて返ってくるのを待った。 代車のようなサービスはない。

 2日後にアイトワ塾が迫っていた。それまでに新品を買い求めておき、後藤さんに1時間ほど早めて来てもらい、「付け替えて」もらう。その上で、と目論んだ。

 実は、この機械は書生だった伸幸さんに贈ってもらった品であり、簡単に廃棄するのは辛かった。また、1つの機能不調のために残る多くの健全な機能を犠牲にするのは不憫に思われた。この辛さと不憫さこそが問題だ、と思われた。

 そんなことを考えている内に、次第に奇妙な気分になった。吾がポンコツエンジンがコトンとなるだけで全体がパーになる吾が身に気付かされたわけだ。そこで妻に、食事時に「小夜子の、納得しかねない気分が少しは分かった」と打ち明けた。