懸案の苗木

 

 「欲しい」と願っていた苗木をいただいた。昨秋のことだ。にもかかわらず、鉢植えであったことをいいことに、今日まで植え付けが延び延びになっていた。

 鉢ごと温室の入り口側においてあった。いつも目に止め、どこに植えようか、と思案し続けて来た。3度ばかり、このハチとスコップをもって、庭を回ったことがある。それでも決まらなかった。「春になり、木々に葉が出て茂ったら、日陰になる」とか、「この木が大きくなれば、この木を日陰にする」などと思案して、決まらなかった。

 「これ以上遅らすわけにはゆかない」という時期になった。同時に、この日は他に大仕事をする元気はなかった。かといって「クサヌキだけでは、1日が惜しい」との気分もあった。「そうだ、今日こそ」との思いで、庭を巡った。

 かくして決めた。穴を掘り、イシミ一杯分の肥料(大部分は腐葉土、他に鶏糞、灰、アブラカス、砕いたキガラ、そして苦土石灰少々)を鋤きこみ、植えた。

 それほど、この庭には最早、木の立場で考えると、とりわけ果樹は、植える余地がなくなってしまっている。

 やっとこの日、数か月間の懸案だった苗木を植え終わった。