ヒヨドリの野菜の狙い方のごとし

 

 この庭を縄張りにしているヒヨドリは、食事時(空腹をおぼえた時)になると畑を襲い、旨そうな野菜をついばみはじめる。

 妻も、食事時になると収穫籠を手にして畑に出向くが、そのおもむき方はヒヨドリに似ている。なぜなら、出向く時点ではメニューを決めておらず、畑にたどり着いてから、美味しそうに見えた野菜に手を出しているからだ。もちろん、私が「お好み焼き」を所望すればキャベツを採るが、「今週からコマツナの収穫を始めうよう」とか「この畝の北の端から順次片づけよう」などといった収穫をしたことがない。ヒヨドリのごとく、畑に出向き、たどり着いてから畝の間を巡りながら、「採り時だよ」と語り掛けられでもしたかのように目に留まった野菜をつまんで回る。もちろんそのうちに、ヒヨドリとは違って、「炒め物にしよう」などと考え始め、「ならばパン食だ」「確か、バナナが少し熟れすぎていた。あれをジュースに活かそう」などと思索を深め、収穫がおわる頃にはメニューが決まっているようだ。

 だからこの春も、そうした収穫方法になり、この中日時点でも収穫し終わった畝はなく、畑はこの状況だった。やむなく私は「今日のうちにこの畝は空けて欲しい」と頼み、野菜を抜き切ってもらわざるを得ない。そして、夏野菜用に仕立て直す。

 かくのごとき妻とヒヨドリの関係だが、妻はヒヨドリがあまり好きではない。小鳥としてはカラダがでかいし、メジロやシジュウガラなど小型の小鳥に対して威嚇的だ。明らかに怖がらせている。

 それもあってか、見事に咲き始めた「水鉢生花」のヒメモクレンを、ヒヨドリが餌として狙い始めた時に、妻は「小鳥さんの取り分でしょう」といつものごとくには言わず、珍しく厳格だった。細い絹糸を持ち出し、枝から枝へと張り巡らせ、それを脅しにして「これで良し」とご満悦。その後、その有効性が証明されたが、とても満足していた。

 週の後半は、金曜日の終日の雨と土曜日の暖かい1日が、かくのごとく畑を元気にして、花盛りになった
 

畑はこの状況だった

花盛りになった