また亡き母を偲び
月曜日に、短い一畝をたがやしはじめたが、調子がしだいに上がり、ついに古い地層までスコップを踏み込むまでになった。有機物が含まれない赤土を掘り出した。「このような痩せた土地で、一家をよくも支えたものだ」と、母を偲んだ。石もたくさん混じっている。 翌日は、黄な粉と海苔巻きの安倍川もちを頬張りながら、または母を思い出した。それは、妻に手なずけられた母の幸せを思い出した、と言ってよいのかもしれない。 母が存命中はメニューにしばしば「ちらし寿司」と「鋤焼」が登場した。それは、母の機嫌を損ねた時の妻の常とう手段だった。「お母さん、今夜はちらし寿司にしましょうか。鋤焼にしましょうか」と問いかけると「そうね」と、母の機嫌が直ったらしい。 私もその手に引っかかっているナ、とは思ったが、悪い気はしなかった。