思うところがあって

 

 月曜日の夕刻のこと、「せめて草抜きでも」と思い、ハスがすっかり根付いたオレンジプールの側にしゃがみ込み、除草に手を付けた。妻が朝の野菜の収穫に出た折に、夜露などで衣服をベショベショにせずに済ませられるように、と思ったわけだ。

 小路の部分の草を抜き終え、草むらにニュッと左手を突っ込んだ時に「痛い」と思った。即座に、マムシではない、と痛さで分かった。40年近く前にマムシに咬まれた時と同様、左の薬指の第二関節にくっついてきたのは小さなムカデだった。

 「妻のことだ」と思った。過日、庭で久しぶりにマムシを捕まえたから、マムシを気にしていることだろう。除草に手を付けてヨカッタ、と思った。そう思いながら、すぐさま、居間に走り、四国の青年に前日もらったばかりの薬を、咬まれたところに塗り付けた。確かに痛みはやわらいだように感じた。

 この一件は、朝食時に妻に報告した。「ムカデはどうしました」との質問が返って来た。「ムカデはどうした」を思い出し、実にバツが悪かった。ほんの少し指が腫れているだけだし、久しぶりに免疫力を高める好機であっただけなのに、「マズカッタ」と思った。「キチガイに刃物」だった。

 たまたまこの日はコンコンと呼ぶ除草道具を用いていた。その道具で反射的にムカデを殺した。いつもの異なる道具を用いていたら、素早く逃げるムカデを取り逃がしていたことだろう。コンコンでも、3度目に打ち下ろしたときにやっと仕留められたのだから。「キチガイに刃物」であった、と痛く反省した。

 

小路の部分の草を抜き終え

いつもの異なる道具